Google決算2026年7〜9月期を解説|検索広告が12%増に減速した3つの理由とAI Mode広告の行方

決算分析

Googleの親会社であるAlphabetが、2026年10月28日(米国時間)に2026年7〜9月期(第3四半期)の決算を発表しました。売上高は前年同期比25%増の1,276億ドルと、数字だけ見れば絶好調です。

ところが発表直後、株価は時間外取引で10%以上下がりました。理由をひと言でいえば「検索広告が思ったより伸びなかった」から。Google検索のクエリ数は過去5年で最も高い伸びを見せているのに、検索の売上は前四半期からほとんど増えていません。

この記事では、前四半期(4〜6月期)との違い、Googleの全体方針、今後の見通しを整理したうえで、SEOや広告の担当者が気にしておきたいポイントを解説します。MicrosoftやMetaなど競合するAI企業との比較は「AI企業の決算比較」にまとめています。

この記事のポイント

  • 売上は過去最高だが、増えた分の6割以上はGoogle Cloud
  • 検索の売上は前年比12%増。前四半期の17%増から減速した
  • 減速の理由は「為替」「EUの少額免税撤廃」「AI Modeの収益化の遅れ」の3つ
  • AI Mode内の広告を10か国に拡大。日本はまだ対象外
  • 2027年の設備投資は「大幅に増える」と明言

2026年Q3決算の概要:売上は過去最高、純利益は25%減

売上高
1,276億ドル
前年比 +25%
Google Cloud
307億ドル
前年比 +103%
フリーキャッシュフロー
−91億ドル
2四半期連続マイナス

まずは全体の数字から見ていきます。売上高は1,276億ドルで、13四半期連続の2桁成長。営業利益も前年同期比30%増の406億ドルで、本業はしっかり稼いでいます。ピチャイCEOは、年換算で売上5,000億ドルのペースに乗ったと話しています。

一方で、純利益は前年同期比25%減の262億ドル、1株利益(EPS)は2.12ドルでした。これは本業の不振ではなく、保有株式の評価損(報道ではSpaceX株)によるものです。前四半期は逆に巨額の評価益で純利益がふくらんでいたので、株式の値動きで最終利益が大きくぶれる状態が続いています。

市場予想と比べると、売上高・調整後EPSともにわずかに下回りました。売上と利益がそろって予想に届かなかったのは、およそ4年ぶりです。

前四半期(Q2)から何が変わったのか

4〜6月期(Q2)と7〜9月期(Q3)を並べると、変化がよく分かります。

項目Q2(4〜6月)Q3(7〜9月)
売上高1,198億ドル(+24%)1,276億ドル(+25%)
検索&その他632.7億ドル(+17%)633.5億ドル(+12%)
YouTube広告111億ドル(+13%)112億ドル(+9%)
Googleネットワーク73億ドル(−1%)75億ドル(+1%)
Google Cloud248億ドル(+82%)307億ドル(+103%)
営業利益率34%31.8%
設備投資449億ドル514億ドル
フリーキャッシュフロー−59億ドル−91億ドル
Geminiアプリ利用者9.5億人10億人超
Cloudの受注残5,140億ドル5,610億ドル
カッコ内は前年同期比。Alphabet決算資料、決算説明会の内容をもとに作成

目を引くのは検索の数字です。Q2が632.7億ドル、Q3が633.5億ドルで、増えたのはわずか7,900万ドル(約0.1%)。前年の同じ時期(2025年Q2→Q3)には約24億ドル増えていたので、季節的な伸びがほぼ消えた形です。

過去5四半期の成長率を並べると、検索とCloudの差はさらにはっきりします。

検索とCloudの売上成長率(前年同期比)

0% 25% 50% 75% 100% Q3’25 Q4’25 Q1’26 Q2’26 Q3’26 34%48%63%82%103% 15%17%19%17%12% Google Cloud 検索&その他

出典:Alphabet各四半期の決算資料をもとに作成

Cloudは5四半期で34%増から103%増まで一気に加速した一方、検索は15〜19%の範囲で推移したあと、Q3で12%まで落ちました。12%という数字は2025年Q2以来の低さです。

売上の主役は広告からCloudへ

今回の決算で一番大きな変化は、Alphabetの稼ぎ方そのものが変わりつつあることです。前年同期からの売上増加分(約252億ドル)のうち、62%はCloudが生み出し、広告は31%にとどまりました。

売上の内訳(前年同期との比較)

Q3’25 1,023億$ Q3’26 1,276億$ 広告 72.5% 14.8% 12.6% 広告 64.3% 24.1% 11.2% 広告 Cloud サブスク・端末など その他

棒の長さは売上の規模に比例。広告=検索・YouTube・ネットワークの合計。出典:Alphabet決算資料、PPC Landの集計をもとに作成

広告が売上に占める割合は、1年で72.5%から64.3%まで下がりました。広告そのものは820億ドルと前年より約78億ドル増えているので縮んでいるわけではありませんが、「Googleは広告の会社」というイメージは少しずつ変わり始めています。

Cloudは利益率も改善、受注残は5,610億ドル

Cloudは売上が倍増しただけでなく、営業利益も約36億ドルから約111億ドルへ3倍以上になり、営業利益率は23.7%から36.2%まで上がりました。今回初めて決算説明会に登場したGoogle Cloudのトーマス・クリアンCEOによると、年間売上が10億ドルを超える製品ラインがすでに18あるそうです。

伸びを支えているのは、AI向けのインフラと、自社開発のAIチップ「TPU」をシステムごと販売するビジネスです。TPUの利用企業は約100社で、AnthropicやAppleの名前も挙がりました。将来の売上になる受注残は5,610億ドルあり、その55%強が今後2年間で売上として計上される見込みです。

検索:クエリは5年で最高の伸び、なのに売上は鈍化

Googleによると、検索クエリの前年比の伸び率は過去5年で最も高く、商用クエリも増えています。ただし具体的なクエリ数や伸び率は公表されていません。「検索は使われているのに、お金になっていない」。今回の決算で投資家が一番気にしたのはこの点です。

減速の理由は3つ

決算説明会では、CFOのアシュケナージ氏と広告事業を統括するシンドラー氏が、検索の減速について次の3つを挙げました。

1為替の影響

Q2は為替が追い風だったが、Q3は逆風に。連結売上では約7億ドルのマイナス要因になった。

2EUの少額免税撤廃

EUが少額輸入品の関税免除(de minimis)をなくし、欧州向けに売っていたアジア太平洋の小売事業者が広告を減らした。

3AI Modeの収益化の遅れ

AI Modeのクエリが急増したが、通常の検索結果ほど広告が表示されておらず、1クエリあたりの収益が低い。

1と2は一時的な要因ともいえますが、3は構造的な問題です。シンドラー氏は「軌道にはとても満足している」と強調しつつ、AI Modeのクエリが伸びたことが収益にマイナスに働いたと認めました。また、前年のQ3から検索が加速していたため、その反動で伸び率が低く見えやすいことも、CFOは前回の決算時点で予告していました。

「まず体験、収益化はそのあと」

ピチャイCEOは、10年ほど前のモバイルシフトを引き合いに出し、まず最高の検索体験をつくり、収益化はその後に続くという考えを示しました。モバイル移行期のGoogleは、クリック単価の下落が何四半期も続いた時期があります。今回も同じように、しばらくは「使われ方の変化に収益が追いつかない」時期が続くと読むのが自然でしょう。

AI Modeでの検索のされ方

今回の決算では、AI Modeの使われ方についていくつか数字が出ています。

  • AI Modeのクエリは、通常の検索より平均で3倍長い
  • AI Modeの検索の5回に1回は、音声・画像・文書を使った入力
  • 画像などを使ったビジュアル検索は月500億回を突破

2月の時点では非テキスト入力は「6回に1回」だったので、検索のマルチモーダル化は着実に進んでいます。キーワード1語で探すのではなく、長い文章や画像で質問する人が増えているということです。

検索の「エージェント化」が次のテーマに

ピチャイCEOは、予約、フォーム入力、日程調整、購入といった「人の代わりに作業をこなす」エージェント機能を検索に持ち込む方針を明らかにしました。エージェントはGoogleの製品群をつなぐ共通の層になり、今後はChrome、Android、Workspaceにも広げていくとしています。

決算と同じ日には、外部の開発者がGoogle検索やGeminiアプリの中で動くアプリを作れる「Connected Apps Platform」のプレビューも発表されました。ユーザーがGoogleの中で調べ物から行動までを完結させる流れは、今後さらに強まりそうです。

広告:AI Mode広告を10か国に拡大、日本はまだ

検索・YouTube・ネットワークを合わせた広告売上は820億ドルで、前年同期比10.5%増。市場予想の834億ドルには届きませんでした。

AI Modeの収益化が遅れていることへの答えとして、GoogleはAI Mode内の広告を一気に広げます。決算発表と同じ日に、新たに10か国で広告の配信を始めると発表しました。

新たに配信開始(10か国)

オーストラリアカナダインドケニアマレーシアニュージーランドナイジェリアパキスタンフィリピンシンガポール

Q4(10〜12月)に開始予定

ブラジルメキシコイギリス

今回の発表に含まれていない

日本

米国では、AI Modeでの追加の質問に対する回答にも広告を出す「マルチターン広告」が始まります。会話を続けるたびに広告の枠が生まれるので、AI Modeの収益化を早める手段として注目されます。広告には「スポンサー」と表示されます。

YouTubeとネットワーク

  • YouTube広告:112億ドル(+9%)。2026年で一番低い伸び。ブランド広告が最大の牽引役で、テレビでの視聴が広告売上の3分の1以上を占める
  • YouTubeのサブスク:YouTube MusicとPremiumの登録者が、トライアルを含めて1億5,000万人を突破
  • Googleネットワーク:75億ドル(+1%)。AdSenseなど外部サイトに出す広告で、2025年半ばから続いていたマイナスを抜けた

なお、今回の決算資料には、広告のクリック数やクリック単価(CPC)が載っていません。検索の減速が「広告の表示回数が減ったから」なのか「単価が下がったから」なのかは、後日提出される四半期報告書(10-Q)を待つ必要があります。

AI投資と資金繰り:キャッシュフローは2四半期連続のマイナス

もうひとつ市場が警戒したのが、お金の出入りです。データセンターやサーバーへの設備投資は514億ドルと、1年前の2倍以上に膨らみました。

設備投資とフリーキャッシュフローの推移

600 400 200 0 −100 240 357 449 514 245 101 −59 −91 Q3’25 Q1’26 Q2’26 Q3’26 設備投資 フリーキャッシュフロー

単位:億ドル。出典:Alphabet決算資料をもとに作成

本業で稼いだ営業キャッシュフロー(423億ドル)よりも設備投資のほうが大きく、フリーキャッシュフローは91億ドルのマイナスでした。これには、2018年に欧州委員会から科された制裁金の支払い(52億ドル)や、TPU販売に向けた在庫の積み増しも含まれています。

この期間、Alphabetは自社株買いを一切行っていません。代わりに株式発行で約124億ドル、社債で約287億ドルを調達し、長期債務は1,251億ドルに増えました。手元の現金と有価証券は2,651億ドルあるので資金がすぐ尽きるわけではありませんが、かつての「稼いだお金で自社株買いをする会社」から「借金と増資でAIに投資する会社」へと、姿が変わりつつあります。

今後の見通し:2027年の設備投資は「大幅増」

CFOが示した今後の見通しは次のとおりです。

  • 2026年の設備投資:1,950〜2,050億ドルの予想を据え置き
  • 2027年の設備投資:大幅に増える見込み。詳細はQ4決算(2027年初め)で公表。市場では3,000億ドル超との見方も
  • Q4の広告:為替の逆風がQ3よりやや大きくなり、主に検索とYouTube広告に影響。前年の検索加速の反動も続く
  • Cloud:TPUシステムの販売はQ4に拡大し、2027年に本格化。一方で外部の計算資源を借りるため、目先の利益率は下がる見込み

CFOは、この投資期間を通じて資本コストを大きく上回る投資収益を上げられると説明しています。投資が売上に変わるまでのタイムラグを、市場がどこまで待てるかが今後の焦点になりそうです。

SEO・Web担当者が押さえておきたいこと

最後に、SEOやWebマーケティングの立場から今回の決算をどう読むかをまとめます。

一番大事なのは、「検索クエリが増えている=サイトへの流入が増える」ではないという点です。今回の決算で、AI Modeの利用が増えるほど1クエリあたりの広告収益が下がる構図が見えてきました。広告ですら追いついていないので、オーガニック検索のクリックにも同じことが起きている可能性は十分あります。実際、Chartbeatのデータでは、北米のニュースサイトのページビューに占める検索流入の割合が、1年で21%から12%に下がっています。Google側は「AI機能は毎週何十億ものクリックをWebに送っている」と主張していますが、サイト単位で見ると流入減を感じている人は多いはずです。

また、エージェント機能やConnected Apps Platformのように、Googleの中で用事を済ませる仕組みは今後も増えていきます。検索結果からサイトに来てもらうことだけでなく、AI Modeの回答の中で自社の情報がどう扱われるかまで意識する必要がありそうです。

今後チェックしたいポイント

  1. 10-Qで開示されるペイドクリック数とクリック単価の推移
  2. AI Mode広告とマルチターン広告が日本で始まる時期
  3. 検索エージェント機能の日本での提供状況
  4. Q4決算(2027年初め)での検索の伸び率と、2027年の設備投資額

まとめ

2026年7〜9月期のAlphabetは、Cloudの急成長で売上を大きく伸ばした一方、長年の稼ぎ頭である検索広告は減速しました。検索そのものはかつてないほど使われていますが、AI Modeという新しい形の検索で、まだ十分にお金を稼げていません。

Googleは「体験が先、収益化はあと」というスタンスを明確にしており、AI Mode広告の拡大やエージェント機能の導入で、検索の形はこれからも変わっていきます。SEOに関わる人にとっては、決算の数字が検索の変化を映す鏡になります。次のQ4決算でも、検索の伸び率とAI Modeの収益化の進み具合に注目です。

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参考資料

※本記事は2026年10月29日時点の公開情報をもとにまとめたもので、投資の判断を勧めるものではありません。金額はドル建ての発表値を億ドル単位に換算し、一部を四捨五入しています。