Microsoft決算2026年7〜9月期を解説|Azure48%増・営業利益率50%、Googleと明暗が分かれた理由

決算分析

Microsoftが2026年10月28日(米国時間)、2027年度第1四半期(2026年7〜9月)の決算を発表しました。同じ日に決算を出したGoogleの株価が時間外で10%以上下がったのに対し、Microsoftの株価は約4%上昇。AIへの巨額投資を続けている点は同じなのに、市場の評価ははっきり分かれました。

この記事では、Microsoftの決算を前四半期との違い、事業ごとの中身、AI事業の数字、OpenAIとの関係、今後の見通しに分けて整理し、最後にGoogleと比べて何が違うのかを考えます。

この記事のポイント

  • 売上は19%増の923億ドル、営業利益率は50%。市場予想をすべて上回った
  • Azureは48%増と前四半期(43%増)から加速。次の四半期は49〜50%増を予想
  • 事業区分を「エージェントとインフラ」「端末と個人向け」の2つに再編
  • OpenAIからの売上は四半期で100億ドル、全体の約11%
  • 設備投資は続くが、フリーキャッシュフローは186億ドルのプラスを維持

決算の概要:売上19%増、Azureが48%増

売上高
923億ドル
前年比 +19%
Azure
332億ドル
前年比 +48%
営業利益
459億ドル
利益率 50%
フリーキャッシュフロー
186億ドル
前年比 −27%

売上高は前年同期比19%増の923億ドルで、市場予想(約907億ドル)を上回りました。営業利益は21%増の459億ドルで、営業利益率は50%。売上の半分が営業利益として残る計算で、巨大企業としては驚くほど高い水準です。調整後の1株利益(EPS)も4.89ドルと、予想の4.73ドルを超えました。

今回からAzureの売上が金額で開示されるようになり、332億ドルと分かりました。市場予想の323億ドルを上回り、伸び率は48%。会社が7月に示していた予想(約45%増)も超えています。純利益は32%増の366億ドルで、OpenAIへの投資による影響を除いても18%増でした。

前四半期(4〜6月)から何が変わったのか

項目4〜6月期
(2026年度Q4)
7〜9月期
(2027年度Q1)
売上高900億ドル923億ドル
Azureの伸び率+43%+48%
検索・広告(TAC除く)の伸び率+13%+12%
商用の受注残(RPO)6,780億ドル6,770億ドル
2026年の設備投資見通し約1,750億ドル約1,700億ドル
Copilotの日次利用者―前四半期比 約+50%
検索・広告は新しい区分で組み替えた数字。出典:Microsoft決算資料、決算説明会、PPC Land

一番の変化はAzureの加速です。この1年ほど40%前後で推移していた伸び率が、ここ2四半期で一段上がりました。

Azureの売上成長率の推移(前年同期比)

0%25%50% 40%39%40%43%48% 49〜50% 25年7-9月 25年10-12月 26年1-3月 26年4-6月 26年7-9月 予想10-12月

点線は会社予想(為替影響を除く)。出典:Microsoft決算資料、各種報道

一方で、将来の売上になる受注残(RPO)は6,770億ドルで、前四半期からほぼ横ばいでした。前年比では73%増と大きいものの、市場予想(約7,060億ドル)には届いていません。新規の大型契約のペースが一服したのか、一時的な揺れなのかは、次の四半期の数字を見る必要があります。

事業区分を再編:「エージェントとインフラ」が8割超

今回の決算から、Microsoftは事業区分を大きく変えました。これまでの3区分をやめ、「Agents and Infra(エージェントとインフラ)」と「Devices and Consumer(端末と個人向け)」の2つにまとめています。名前からして、AIエージェントとそれを動かすクラウド基盤を会社の中心に置くという宣言です。

主な事業の売上と伸び率(2026年7〜9月)

Azure M365商用クラウド ライセンス販売 検索・広告 Xbox 業界向け Windows・端末 332億 +48% 278億 +17% 84億 −3% 65.5億 +10% 54億 −2% 53億 +9% 35.5億 −22% エージェントとインフラ 端末と個人向け

単位:ドル。エージェントとインフラは768億ドル、端末と個人向けは155億ドル。出典:Microsoft決算資料、PPC Landの集計をもとに作成

「エージェントとインフラ」は768億ドル(25%増)で、売上の8割以上を占めます。Azure、法人向けMicrosoft 365、業界向けソリューションなどがここに入ります。一方の「端末と個人向け」は155億ドル(3%減)。Windowsのライセンスと端末の売上が22%も減っていて、ナデラCEOはメモリやストレージの価格上昇でPCの需要が落ちたことを理由に挙げています。AIデータセンター向けにメモリの需要が急増し、そのしわ寄せがPCに来ている形です。

AI事業の中身:Copilot、GitHub、Foundry

Microsoftは今回もCopilotの有料ユーザー数を公表しませんでした。その代わりに、AIがどれだけ使われているかを示す数字をいくつも出しています。

Microsoft 365 Copilot日次利用者 5倍超

前年比で5倍以上、前四半期比でも5割近く増加。5万席以上を契約する顧客は8倍超に。

GitHub Copilotプルリクの3分の1超

AIエージェントが作成したプルリクエストが半年で6倍に増え、全体の3分の1を超えた。

Foundry(AI開発基盤)売上 3倍超

利用企業は12万社超。複数のAIモデルを組み合わせて使う顧客は5倍に。

Agent 3655,000万エージェント

企業が登録・管理しているAIエージェントの数。前四半期比で3割以上増加。

ナデラCEOはCopilotを「仕事のための新しいOS」と表現しています。Copilotへの質問の9割は「オートモード」で処理されていて、質問の内容に応じて複数のAIモデルを自動で使い分けているそうです。特定のモデルに頼らず、OpenAIのモデル、オープンソースのモデル、自社開発の「MAI」モデルを、コストと性能で選ぶ方針がはっきりしてきました。

課金の形も変わりつつあります。1人いくらの席単位の契約に加えて、使った分だけ払う従量課金のクレジットを使う顧客が、この四半期だけで75%以上増えました。CFOのフッド氏は、一部のAIモデルの利用単価(トークン単価)が想定より高かったこともAzureの売上を押し上げたと話しています。

自社モデル「MAI」と自社チップ「Maia」

Microsoftは、最先端のモデルが出てから3〜6か月以内に、はるかに少ない学習コストで同等の性能のモデルを自社で作ることを目標に掲げています。次世代の基盤モデル「MAI Base 2」は事前学習を終えました。チップでも、自社開発の「Maia 200」が電力あたり最大1.7倍のトークンを処理できるとしています。OpenAIとの関係を保ちつつ、自前で作れる部分は自前で持つ、という二段構えです。

OpenAIとの関係:売上の約11%を占める

OpenAIからの売上
100億ドル
全体の約11%
保有比率
約24%
転換後ベース
OpenAIへの売掛金
72億ドル
6月末 60億ドル
出資の約束額
130億ドル
うち120億ドル支払済

MicrosoftがOpenAIから得た売上は、この四半期で100億ドル。会社全体の約11%にあたります。OpenAIがChatGPTやAPIを動かすために使うAzureの利用料などが中心で、OpenAIの成長がそのままMicrosoftの売上になる構図です。

ただし、OpenAIへの売掛金(まだ受け取っていない代金)は6月末の60億ドルから72億ドルに増えました。OpenAIはまだ大きな赤字を出している会社なので、1社への依存が高まるのはリスクでもあります。Microsoftは7月の決算で、クラウド売上の9割近くはAIモデル開発企業以外の顧客から来ていると説明していました。

検索・広告:BingとLinkedInをまとめた新区分に

SEOや広告の立場で気になるのが、検索広告の数字です。今回から開示の仕方が変わり、これまでの「検索・ニュース広告」(Bing、Edge、MSNなど)に、LinkedInの広告やプレミアム会員の売上を加えた「Search and advertising」という区分になりました。

  • 売上は65.5億ドルで、前年同期比10%増
  • トラフィック獲得コスト(TAC)を除いた売上は12%増。Bing、Edge、LinkedInのすべてで量と単価が伸びた
  • 新区分で組み替えた2026年度の年間売上は248億ドル(旧区分では152億ドル)
  • 次の四半期もTAC除きで2桁前半の伸びを予想

ナデラCEOは「BingとEdgeは今回もシェアを伸ばした」と話していますが、具体的なシェアの数字は出ていません。Bing単体の伸び率も分からなくなったので、検索エンジンとしての勢いは外から見えにくくなりました。規模で比べると、Microsoftの検索・広告(65.5億ドル)は、Googleの検索広告(633.5億ドル)の10分の1ほどです。

投資とキャッシュフロー:投資しながら黒字を維持

設備投資は、リースを含めて452億ドルと前年から30%増えました。そのうち約4分の3がGPUやCPU、メモリなど比較的早く入れ替えが必要な機器に使われています。この四半期だけで5大陸に24のデータセンターを新設しました。

それでも、フリーキャッシュフローは186億ドルのプラスです。前年からは27%減ったものの、同じ時期にマイナス91億ドルだったGoogleとは大きな差があります。

設備投資とフリーキャッシュフロー:MicrosoftとGoogleの比較

6003000 452 +186 514 −91 MicrosoftGoogle 設備投資FCF設備投資FCF

単位:億ドル。2026年7〜9月期。Microsoftの設備投資はリースを含む。出典:各社決算資料

Microsoftは2027年度を通してフリーキャッシュフローのプラスを保つと明言しています。Office製品などで安定して稼ぐ土台があり、さらにAzureが投資に見合う売上をすでに上げていること。これが、同じように巨額投資をしているGoogleとの評価の差につながっています。

なお、2026年の設備投資の見通しは約1,750億ドルから約1,700億ドルに少し下がりました。投資を絞ったわけではなく、外部から借りる予定だった計算資源の納入やデータセンターの建設が遅れ、支出が後ろにずれたためです。需要が供給を上回る状態は続いていると、フッドCFOは説明しています。

今後の見通し:Azureは49〜50%増を予想

10〜12月期(2027年度Q2)の会社予想は次のとおりです。

  • 売上高:960〜971億ドル(18〜19%増)。市場予想の約956億ドルを上回る
  • Azure:49〜50%増(為替影響を除く)。市場予想は約45%増だった
  • 検索・広告:TAC除きで2桁前半の伸び
  • Windows・端末:30%台半ばの減少。PCの需要減が続く
  • 設備投資:四半期で500億ドル超。年後半に向けてさらに加速
  • 利益率:Azureの比率が上がるため、クラウドの粗利率は約65%に下がり、営業利益率も前年からやや低下

AIのクラウド需要は引き続き強いものの、AIの売上が増えるほど利益率は少しずつ下がっていく見通しです。Office製品のような粗利の高い事業に比べ、AI向けのクラウドは設備にお金がかかるためです。

Googleと比べて見えること

項目(2026年7〜9月)MicrosoftGoogle
売上高923億ドル(+19%)1,276億ドル(+25%)
営業利益率50%31.8%
クラウドの伸びAzure +48%Google Cloud +103%
クラウドの受注残6,770億ドル5,610億ドル
検索・広告65.5億ドル(+10%)633.5億ドル(+12%)
フリーキャッシュフロー+186億ドル−91億ドル
決算後の株価約4%上昇10%超下落
出典:各社決算資料、報道

成長率だけを見れば、売上もクラウドもGoogleのほうが上です。それでも市場がMicrosoftを評価したのは、利益率とキャッシュフローの差が大きいからでしょう。Microsoftは企業向けソフトという安定した土台の上でAIに投資していて、AIの売上もCopilotやAzureですでに見えています。

Googleは逆に、稼ぎ頭の検索広告がAIの影響を最も受けやすい立場にいます。AIが伸びるほどCloudは潤いますが、検索広告の形は変わらざるを得ません。両社の株価の差は、AIが「既存の事業を強くする会社」と「既存の事業を作り変える必要がある会社」の差とも言えそうです。

SEO・Web担当者が押さえておきたいこと

チェックしておきたいポイント

  • Bing経由の流入:Microsoftはシェアが伸びていると主張している。Bing Webmaster Toolsでの確認は引き続き大切
  • Copilotの回答での露出:Copilotは複数のAIモデルを使い分ける仕組み。Google以外のAI検索での見え方も確認したい
  • LinkedIn広告:今後は検索広告と同じ区分で語られる。BtoBでは選択肢として存在感が増している

まとめ

Microsoftの2027年度第1四半期は、Azureの加速、50%という高い営業利益率、プラスのフリーキャッシュフローがそろい、市場予想をすべて上回る内容でした。事業区分を「エージェントとインフラ」中心に組み替え、AIの会社としての姿をより鮮明にしています。

一方で、受注残の伸びが止まったことや、OpenAIへの依存度の高さ、PC需要の落ち込みといった課題もあります。次の決算では、Azureが予想どおり50%前後の伸びを保てるか、受注残が再び増え始めるかが注目点です。

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参考資料

※本記事は2026年10月29日時点の公開情報・報道をもとにまとめたもので、投資の判断を勧めるものではありません。金額はドル建ての発表値を億ドル単位に換算し、一部を四捨五入しています。