Metaが2026年10月21日(米国時間)、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算を発表しました。売上は前年同期比26%増の646億ドルで、市場予想を上回りました。一方、営業利益は37%減。訴訟の和解に伴う約99億ドルの費用を計上したためで、これを除けば11%の増益です。
広告だけで見ると、Metaの伸び(26%増)はGoogle(10.5%増)の2倍以上。AIを広告の成果改善に直結させているMetaは、今もっとも分かりやすく「AIで稼いでいる」会社のひとつです。この記事では、Metaの決算を前四半期との違い、広告の中身、AIへの投資、今後の見通しに分けて整理します。
この記事のポイント
- 売上は26%増の646億ドル。広告1件あたりの単価が14%上昇した
- 表示回数の伸びは鈍化。成長のエンジンが「量」から「単価」に移っている
- 訴訟費用99億ドルで営業利益は37%減、除けば11%増
- 個人向けAIエージェント「Muse」が6週間で1,000万人超に
- 設備投資は四半期349億ドル、フリーキャッシュフローは21億ドルのマイナス
決算の概要:売上26%増、利益は訴訟費用で目減り
売上高は646億ドルで、市場予想の約633億ドルを上回りました。ほぼすべてが広告で、FacebookやInstagram、WhatsAppなどの「Family of Apps」の広告売上は631億ドルです。WhatsAppの有料メッセージやサブスクなどの「その他」売上も11億ドルと59%伸びています。Facebook、Instagram、WhatsApp、Messengerのいずれかを毎日使う人は36.4億人にのぼります。
利益の面では、米国の52州・地域の司法長官と結んだ和解に伴い、約99億ドルの費用を計上しました。10代のメンタルヘルスとSNSをめぐる訴訟で、支払い総額は最大で約186億ドルになります。この影響で営業利益は130億ドル(37%減)、営業利益率は20%に下がりましたが、費用を除くと営業利益は229億ドル(11%増)でした。1株利益(EPS)は3.83ドルで、市場予想の3.57ドルを上回っています。
決算発表後、株価は時間外で約4%上がりました。同じ日に、議決権のない新しい「クラスC株」を1株につき1株配る、実質的な株式分割も発表しています。
前四半期から何が変わったのか
| 項目 | 4〜6月期 | 7〜9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 608億ドル(+28%) | 646億ドル(+26%) |
| 広告の表示回数 | +14% | +10% |
| 広告1件あたりの単価 | +12% | +14% |
| 営業利益率 | 31% | 20%(費用除くと35%) |
| 日次利用者(DAP) | 36.0億人 | 36.4億人 |
| 2026年の設備投資見通し | 1,300〜1,450億ドル | 1,350〜1,450億ドル |
売上の伸びは28%から26%へわずかに落ちましたが、まだ高い水準です。注目したいのは中身の変化で、広告の表示回数の伸びが鈍る一方、1件あたりの単価の伸びが上がっています。過去5四半期で見ると、この傾向がはっきりします。
広告の表示回数と単価の伸び率(前年同期比)
出典:Meta各四半期の決算資料、各種報道
2025年末から2026年初めにかけては、表示回数の伸び(18〜19%)が成長をけん引していました。それが7〜9月期には10%まで落ち、代わりに単価が14%と1年で最も高い伸びになっています。広告の枠を増やすより、1つの枠の価値を上げる方向に成長の源泉が移っていると言えます。
広告の中身:なぜ単価が上がっているのか
広告の単価が上がるのは、広告主が「この広告枠にはもっと払う価値がある」と判断しているからです。その根拠になっているのが、AIによる広告の成果改善です。Metaは決算説明会で、具体的な効果を数字で示しました。
Facebookのフィードで、対象とした層のコンバージョンが2%近く増えた。
モデルを拡張し、アプリ広告のコンバージョンが9.6%、サイト外の成果も1.7%増えた。
提案を採用した広告主は、同じ獲得単価のままコンバージョンが5%近く増えた(Meta推計)。
クリエイターと組む広告が前年比97%以上伸び、年換算で150億ドル規模に。
一つひとつの数字は数%ですが、広告の配信システム全体で積み重なると、広告主の費用対効果は確実に良くなります。生成AIで広告の画像や動画を作るツールも、この四半期に1,000万近い広告主が使いました。動画生成の利用は前四半期から25%増えています。
地域別に見ると、米国の単価が23%上昇
地域別の表示回数と単価の伸び(2026年7〜9月)
前年同期比。ユーザーの所在地ベース。出典:Meta決算資料、Relevant Audience
米国・カナダでは単価が23%上がった一方、アジア太平洋は1%しか上がっていません。アジア太平洋は表示回数で稼ぎ、北米は単価で稼ぐという、はっきりした違いがあります。日本の広告主から見ると、Metaの広告費は地域によって上がり方が大きく違うということになります。
AIへの取り組み:Museと「エージェント経済」
今回の決算でザッカーバーグCEOが最も時間を割いたのが、個人向けAIエージェント「Muse」です。米国とカナダで始めてから約6週間で1,000万人以上が登録し、そのうち約25%が毎日使っています。使い道の1位は買い物で、平均の購入額は200ドルを超えるそうです。11月にはMetaのスマートグラスでも使えるようになります。
Metaは、同社初の最先端モデル「Muse Wonder」も発表しました。さらに、AIエージェント同士が直接やりとりして取引する「Personal Agent Protocol」を、Walmart、Stripe、Shopifyなどと進めると説明しています。人がAIエージェントに買い物を任せる世界で、その入り口を押さえようという狙いです。これは、Googleが検索やGeminiで進めているエージェント機能と真正面からぶつかる領域です。
企業向けにも、モデルのAPI、コーディング支援の「Muse Code」、ビジネス向けエージェントをまとめた「Meta Enterprise」を準備中です。CFOのスーザン・リー氏は、こうした新しいAI事業が2027年から売上に上乗せされ始めると見込んでいます。
投資とキャッシュフロー:自社株買いを止めてAIへ
設備投資はリースを含めて349億ドル。営業キャッシュフロー(328億ドル)を上回り、フリーキャッシュフローは21億ドルのマイナスになりました。1年前は106億ドルのプラスだったので、AIへの投資の重さがはっきり表れています。この四半期は自社株買いも行っていません(前年同期は33億ドル)。
その一方で、従業員は前年から15%減っています。人を減らし、その分をAIの計算資源に回すという、メリハリのはっきりした経営です。メタバース事業のReality Labsは今四半期も41億ドルの赤字で、2026年通年で180〜190億ドル、2027年は約150億ドルに縮小する見込みです。投資の重心がメタバースからAIへ移っていることが数字にも出ています。
今後の見通し:10〜12月期は730〜760億ドル
- 10〜12月期の売上:730〜760億ドル。為替で約1%の逆風。市場予想は約744億ドル
- 2026年の費用総額:1,750〜1,790億ドル(訴訟費用を含む)
- 2026年の設備投資:1,350〜1,450億ドル(下限を引き上げ)
- 2027年:中核事業とAIへの積極投資を続けつつ、高い売上成長を保つ方針。具体的な数字は次の決算で公表
10〜12月期の予想の中央値745億ドルは、前年同期の599億ドルから約24%増にあたります。年末商戦の広告需要を考えると、高い伸びはまだ続く見込みです。
Googleと比べて見えること
| 項目(2026年7〜9月) | Meta | |
|---|---|---|
| 広告売上 | 631億ドル(+26%) | 820億ドル(+10.5%) |
| 広告の量と単価 | 表示+10%、単価+14% | クリック数・単価は非開示 |
| 設備投資 | 349億ドル | 514億ドル |
| フリーキャッシュフロー | −21億ドル | −91億ドル |
| AIエージェント | Muse(米国・カナダ) | 検索・Geminiに導入へ |
| 決算後の株価 | 約4%上昇 | 10%超下落 |
Metaの広告売上は、1年前にはGoogleの3分の2ほどでしたが、今ではほぼ8割に迫っています。両社とも広告の配信にAIを使っていますが、違いは「AIが広告の邪魔をしないか」という点です。Metaのフィードでは、AIは広告をより正確に届けるために裏側で働いています。Googleの検索では、AI Modeという新しい画面そのものが広告の枠を減らす方向に働いており、収益化の作り直しが必要になっています。
もうひとつ、Metaは広告単価や表示回数を毎回開示していますが、Googleは今回クリック数や単価を決算資料に載せていません。広告主にとって、どちらが状況を把握しやすいかは明らかです。
広告・Web担当者が押さえておきたいこと
チェックしておきたいポイント
- Meta広告の単価上昇:特に北米で上昇が急。海外向けに出稿している場合は獲得単価の推移を確認したい
- AI任せの運用が前提に:Advantage+やAIアシスタントの提案を使う広告主ほど成果が出やすい設計になっている
- クリエイター連携広告:パートナーシップ広告が年換算150億ドルに。インフルエンサー施策との組み合わせが一般化
- エージェント経由の購買:Museでの買い物が増えれば、商品情報をAIエージェントにどう渡すかが新しい課題になる
まとめ
Metaの2026年7〜9月期は、AIで広告の成果を上げ、それが単価の上昇として売上に直結していることがよく分かる決算でした。訴訟費用で利益は目減りしたものの、本業の広告は26%増と力強く、市場も前向きに受け止めています。
今後の焦点は、表示回数の伸びが鈍るなかで単価の上昇がどこまで続くか、そしてMuseをはじめとする新しいAI事業が2027年にどれだけ売上を生むかです。2027年の投資計画が示される次の決算にも注目です。
あわせて読みたい:2026年7〜9月期の決算シリーズ
- AI企業の決算比較2026年Q3|広告とクラウドの勢力図
- Google決算2026年7〜9月期|検索広告が減速した3つの理由
- Microsoft決算2026年7〜9月期|Azure48%増の中身
- Amazon決算2026年7〜9月期|AWS39%増と広告の現在地
- OpenAIの業績2026|売上500億ドルとChatGPT広告
- Anthropic上場へ|S-1で分かった売上・利益・リスク
参考資料
- Meta Reports Third Quarter 2026 Results(Meta公式)
- Investing.com:Meta Q3 2026 Earnings Call Transcript
- Relevant Audience:Meta Q3 2026 ad price and impressions
- Hargreaves Lansdown:Meta Q3 results
- PPC Land:Meta Q1 2026
※本記事は2026年10月29日時点の公開情報・報道をもとにまとめたもので、投資の判断を勧めるものではありません。金額はドル建ての発表値を億ドル単位に換算し、一部を四捨五入しています。


