AI Overviewsが登場してから、SEOの世界では「これまでのやり方が通用しなくなる」という話が繰り返されています。
ところがGoogle自身の説明は、かなり温度が違います。AI機能は最近始まったものではなく、生成AIブーム以前から検索の裏側で長年使われてきた。 業界がAIを新しい現象として扱っていることのほうが、むしろ訂正の対象になっています。
この記事では、公式ポッドキャスト「Search Off the Record」でAIを扱った回から、AI OverviewsとAI Modeの仕組み、クローラー側の制御、そしてサイト運営者が何をすべきかを整理しました。
この記事は「Search Off the Record 全54回まとめ」のクラスタ記事です。他のテーマは元記事から辿れます。
AIは、突然始まったものではない
第109回(2026-05-01)は、Search Intelligence部門でSafeSearchチームを率いるNikola Todorovic氏がゲストの回です。Googleに15年在籍している人物です。
ここで説明されているのは、AIが検索に入ってきたのは最近ではない、ということでした。
- SafeSearch — 画像・動画・テキストの明示性判定に、畳み込みニューラルネットワークなどを単独のシステムとして活用してきた
- BERT・MUM — 公表済みの技術として検索・ランキングを改善してきた
つまり、生成AIが話題になるずっと前から、AIは検索システムの中で個別に動いていたわけです。AIが新しい現象だという業界の見方が、ここで明確に訂正されています。
この前提を持っておくと、AI Overviewsの位置づけも変わります。ゼロから作られた別物ではなく、既にあった基盤の上に乗った機能だということです。
AI Overviewsの仕組み — fan-out
AI Overviewsは、通常の検索とfan-outという仕組みを使い、複数の結果を統合して要約を生成する独立した機能である、と説明されています。
fan-outとは何か。”A fan out is when you have your own search query”(第109回、2026-05-01)——ユーザーが入力したクエリがあり、そこからGoogleが関連する追加のクエリを派生させて並行して検索する、という仕組みです。
具体例として挙がっているのがレストラン検索でした。ベジタリアン向けの条件を含む複雑なクエリに対して、fan-outで複数のサブクエリを並行して検索し、その結果をまとめて要約する。
背景として語られているのが、ユーザーのクエリの変化です。以前より長く、曖昧または詳細になっている。それがAI機能への需要を後押ししている、と。
SEOの実務に引き寄せると、fan-outの存在は「元のクエリで上位に出ていないページも、派生したクエリ経由で参照され得る」ことを意味します。ただし、その派生クエリが何になるかを外から知る方法はこの回では語られていません。
AI Modeは何が違うのか
AI Modeについては、AI Overviewsとは別のものとして説明されています。
- 会話的な複数ターンのやり取りが可能
- 独自のfan-outと引用を持つ
- より大きな独立したプラットフォームである
ただし重要な補足があります。依然として既存の検索基盤の上で動作している、と。独立したプラットフォームではあるものの、検索インフラから切り離された別システムではないということです。
「AI Modeには別のSEOが必要なのか」という問いに対しては、少なくともこの回の説明からは、基盤が同じである以上まったく別物にはならない、と読めます。
検索の変更は、どう決まっているか
第109回では、Google検索に変更が入るまでのプロセスも語られています。AI機能に限った話ではありません。
- 実験版と本番版を、ランダムなユーザークエリで side-by-side比較
- 人間レビュアーの評価統計を取る
- 担当リードが判断するローンチレビューを通す
人間のレビュアーが介在していることと、統計として判断されていることの2点が押さえどころだと思います。個別のページやサイトが個別に判断されているわけではない、という理解につながります。
クロール制御はどうなっているか
ここからは時計を戻します。第67回(2023-12-21)は2023年の振り返り回ですが、AI関連のクロール制御が整理された年の記録として読めます。
GoogleOtherとGoogle-Extendedは、まったく別物
混同されやすい2つですが、性質が違います。
GoogleOther は実際のクローラーです。それまでGooglebotのユーザーエージェントで行われていた検索以外の社内クロール(研究・トレーニング用途など)を分離するために導入されました。robots.txtで制御でき、アクセスログにも現れます。
Google-Extended は違います。”It is just a product token that you can use in robots.txt”(第67回、2023-12-21)——これは実際のクローラーではなく、Vertex AIやBardなど特定のML学習用途に対してrobots.txtでオプトアウトするためのプロダクトトークンです。アクセスログには出現しません。
ログを見て「Google-Extendedが来ていない」と判断するのは、そもそも見え方が違うということになります。
オプトアウトの仕組みが進まない理由
AI学習に関するオプトアウトについて、Googleの立場が語られています。Google単独で決めるべきではなく、多くのAI企業やパブリッシャーと協議して合意形成する必要があること。そして数十億のホスト名に負担をかけない実装が求められること。だから拙速に進めるべきではない、と。
技術的な難しさより、合意形成と規模の問題として語られているのが特徴的でした。
地域ごとの展開差
SGE(Search Generative Experience)は2023年に開始しましたが、スイスなど一部の国・地域では未展開でした。地域ごとの規制への配慮から段階的に展開している、という説明です。
AI機能の展開に地域差があること自体は、この時点から一貫しています。
注意: 第67回は収録から2年半以上が経過しています。INPはその後実際に移行が完了しており、AIクロール制御の仕組みもその後変化している可能性が高い部分です。この回は「当時どう整理されたか」の記録として読んでください。
「SEOは死ぬ」と、2001年から言われ続けている
第88回(2024-12-30)は2024年の振り返り回です。AIとSEOの関係について、率直な発言が並びます。
“SEO has been dying since 2001, so I’m not scared for it.”(第88回、2024-12-30)
AIがSEOを終わらせるかという問いに対するGaryの答えでした。SEOが死ぬという言説は2001年から続いており、AIの台頭でも同じ言説が繰り返されるだけだ、と。
AI Overviewsの土台は、普段のSEO作業
この回で実務的に重要なのが、RAG(検索拡張生成)に触れた部分です。SEO担当者が普段行っているクロール・インデックス可能なコンテンツ作りが、AI Overviewsの土台になっていると説明されています。
新しい対策が必要になるというより、これまでやってきたことがそのまま前提になる、という整理です。
ドキュメントが足りていない、という自覚
Gary主催の少人数ミートアップでは、参加者の質問がAI(AI Overviews、Gemini、ChatGPT)に集中していたそうです。そのうえで、LLMの仕組みをよりシンプルに説明するドキュメントが不足しているとGary自身が感じている、と語られています。
情報が足りていないという認識をGoogle側も持っていた、というのは知っておいてよいと思います。
AIツールへの評価は割れている
John、Martin、Garyそれぞれが1年間でLLMへの向き合い方がどう変わったかを共有しています。MartinはAIサイトビルダーの生成物が期待外れだったと語り、生成結果が改善されずフォントと配色が変わるだけだった、と。一方でNotebookLMは複数資料の関連付けに便利だと評価しています。
第67回にも関連する逸話があります。GaryがBardを使って講演の下書きを生成したところ、実在しないSearch Console Verification APIという機能をハルシネーションで生成したという話です。現在の技術ではハルシネーションをゼロにはできない、と指摘されていました。
注意: 第88回は収録から1年半以上が経過しています。AI OverviewsやLLM関連の話題は急速に進化しているため、仕様や表現が変わっている可能性が高い部分です。
では、何をすればいいのか
第109回でサイト運営者へのアドバイスとして語られているのは、2点です。
- ユーザーへの価値提供を続けること
- AIツールを賢く活用すること
そして明言されているのが、単なるコンテンツの量産は価値を生まないということでした。
これを説明するために挙げられた例が印象的です。Martin氏がジョイスティック(フォースフィードバック付き)を買ったときの店員とのやりとりを引き合いに、スペックの言い換えでしかない記事の価値の低さが語られています。製品ページに書いてあることを並べ直しただけの記事は、AIがあってもなくても読む理由がない、ということです。
AIで記事を量産できるようになったことは、この観点では何も変えていません。むしろ、スペックの言い換えのようなコンテンツを大量に作るコストが下がったぶん、そうでないコンテンツの相対的な価値が上がっている、と読むこともできます。
なお、Google社内でもAIコーディングツールを使い、複雑なコードベースの調査を効率化している例が紹介されています。ツールとして使うことと、出力をそのまま公開することは別だ、という線引きが一貫しています。
Googleが否定した通説
このクラスタで明確に否定されているのは1件です。
| 通説 | Googleの説明 | 出典 | 鮮度 |
|---|---|---|---|
| AIは検索にとって最近始まった新しい現象 | 以前から検索システムの裏側で長年利用されてきた | 第109回 2026-05-01 | 新しめ |
AI関連では、別のクラスタで扱っている回にも重要な否定があります。こちらも合わせて確認してください。
| 通説 | Googleの説明 | 出典 | 詳細 |
|---|---|---|---|
| サイトをMarkdown化するとLLMに見つけてもらいやすくなる | 誤り。クローラーはHTML処理を解決済みで不要 | 第111回 2026-06-15 | クロール編 |
| llms.txtを置くとAI・検索からの発見性が高まる | 意味がないと明確に否定 | 第111回 2026-06-15 | クロール編 |
第111回の2件は、AI対応として実際に検討されることが多い施策の否定です。この記事のテーマに最も近い実務的な内容なので、クロール編もあわせて読むことをおすすめします。
この記事で扱えていないこと
正直に書いておきます。
AI Overviewsを主題として扱った回は、54エピソード中3本しかありません。しかもそのうち2本(第67回・第88回)は年末の振り返り雑談回で、いずれも収録から時間が経っています。本格的な解説回は第109回の1本だけです。
そのため、この記事では次のような点に答えられていません。
- AI Overviewsに引用されるための具体的な条件
- fan-outで派生するクエリの特定方法
- AI Mode向けの個別の最適化手法
- 日本語検索でのAI機能の挙動
これらについてGoogleが公式ポッドキャストで語った形跡は、今回の範囲では見つかりませんでした。他媒体での発言や公式ドキュメントに情報がある可能性はあります。
日本のサイト運営者にとって
これらの回で日本語検索や日本市場に特化した言及はありません。そのうえで、関わりやすい点を挙げます。
AI学習のオプトアウトを検討している場合
第67回のとおり、GoogleOtherとGoogle-Extendedは性質が違います。Google-Extendedはアクセスログに現れないため、ログ解析で効果を確認しようとしても見えません。robots.txtの記述で制御する対象であることを理解しておく必要があります。
AI機能の展開状況を確認する場合
第67回で、地域ごとの規制への配慮から段階的に展開していると説明されています。日本での展開状況がどうかはこの回では触れられていないので、個別の確認が必要です。
AIでコンテンツを量産している場合
第109回で明確に「単なる量産は価値を生まない」と述べられています。スペックの言い換えのような記事は、その典型例として挙げられました。生成コストが下がったことは、この評価を変えていません。
社内でAIの影響を説明する場合
第88回の「SEOは2001年から死に続けている」という発言と、第109回の「AIは新しい現象ではない」という訂正は、過度な危機感を落ち着かせる材料になります。同時に、RAGの土台が普段のクロール・インデックス可能なコンテンツ作りだという説明は、既存業務の位置づけを説明するのに使えます。
まとめ
AI関連で語られてきた内容を並べると、Googleの立場は一貫して**「新しいことは起きていない」**でした。
AIは以前から検索の裏側で動いていた。AI OverviewsもAI Modeも既存の検索基盤の上に乗っている。RAGの土台は普段のクロール・インデックス可能なコンテンツ作りである。SEOが死ぬという話は2001年から続いている。
その一方で、はっきり否定されたこともあります。Markdown化もllms.txtも発見性を上げません。単なるコンテンツの量産は価値を生みません。AI時代のための新しい施策として提案されているものの多くが、Google側からは意味がないと言われている状況です。
ただし、この記事で扱えた素材は3本だけです。AI Overviewsへの引用条件や日本語検索での挙動といった、実務でいちばん知りたい部分には答えが見つかりませんでした。この領域は動きが速いので、公式ドキュメントとアナウンスを継続的に追う必要があります。
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