MVアグスタ Brutaleとは?|750、910、800から1000まで歴代モデルとスペックを解説

MV Agusta

2001年、MV AgustaはF4からカウルを剥ぎ取りました。むき出しになったトラスフレームと4気筒エンジン、そして丸目のヘッドライト。ネイキッドというジャンルの基準は、この日に書き換えられます。

それから25年。Brutaleは749ccから1078ccまで4気筒で駆け上がり、いったん3気筒に軸足を移し、ふたたび4気筒で208psに到達しました。ここでは全世代のBrutaleを、年式順に追いかけます。

Brutaleとは何か

設計はF4と同じくマッシモ・タンブリーニ。エンジンもF4シリーズのものをアンドレア・ゴッジが開発した水冷直列4気筒で、16本のラジアルバルブを持ちます。1990年から92年のフェラーリF1エンジンに由来する機構です。

シャシーは技術部長マッシモ・パレンティの指揮で新設計されました。エンジンをストレスメンバーとしてトラスフレームから吊るし、Marzocchi製50mm倒立フォーク、Sachsのリアショック、ニッシン製のCNC削り出しキャリパー(フロント6ポット/リア4ポット)。ホイールとスイングアーム、フレームプレート、フォークブリッジはアルミ製です。

第1章:750cc時代(2001-2006)

Brutale 750 Serie Oro(2001) — 300台

F4と同じく、Brutaleも限定車から始まりました。スイングアームを含む多くの部品をマグネシウム化し、金色に仕上げて6kgの軽量化を達成しています。

伝統のMVレッドに、タバコ色のレザーシート。300台それぞれに認証書と、ステアリングヘッドに取り付けられるナンバー入りゴールドプレートが付属しました。

Brutale 750 S(2002) — 最初の量産Brutale

Oroのマグネシウム部品をアルミに置き換えた量産版。127ps、75Nmを発生します。

フロントは49mmのShowa、ホイールはF4 750 S Evo 03と同じシルバーのアルミ製。黒のフェイクレザーシートを備え、レッドとオペークブラックの2色が用意されました。

750S用の4つのキット(2002-2006)

この時代のBrutaleは、車両ではなくアップグレードキットの形で限定車が展開されました。いずれも各300セット限定で、認証書とナンバープレートが付きます。

  • Brutale America — 1970年代の750 Sなどクラシック期のカラーに着想を得た赤/白/青のタンクと青いテールパネル、アルカンターラシート。フルオプションではカーボン外装とMarchesini製10本スポーク鍛造ホイールが加わります
  • Brutale CRC — シルバー/ブルーのタンクとテールパネル。F4 SP-01 Viperに似たカラーリングです
  • Brutale Mamba(2006) — チタンエキゾーストとカーボン外装。F4 1000 Mambaと同じ赤×黒
  • Brutale Gladio(2006) — メタリックブラック/グレーのタンクとフェンダー、レザーシート、MV Corseのアラーム付き

第2章:大排気量化(2005-2009)

Brutale 910 S(2005) — 最初の「ビッグボア」

ここには技術的な事情があります。F4 1000 Sの998ccエンジンは背が高すぎてBrutaleのフレームに収まらなかった。そこで750のエンジンをボア2.2mm拡大の76mm、ストローク6.3mm延長の51mmとして909ccを得たのです。

出力は136ps/11,000rpm。フレームは750から変更なく、フルアジャスタブルの50mm Marzocchiとリモートリザーバー式リアショックを装備。タンクには「910」のロゴが入ります。

Brutale 910 R(2005) — ベスト・オブ・ショー

2005年のミラノEICMAでベスト・オブ・ショーを受賞した高性能版。吸気ポートを研磨し専用EPROMを与え、オプションのレーシングエキゾースト装着で144psに達します。

注目すべきは足まわりで、Marzocchi製50mm R.A.C.(Road Advanced Component)フォークを公道用バイクとして初めて採用しました。Brembo製ラジアルP4/34キャリパーにはBrutaleのロゴ入り。ステアリングフランジ下部、フォーク、フレームプレート、ハンドルバーウェイトにチタンコーティングが施され、車体はブラック/アンスラサイトに赤のグラフィックと赤いヘッドカバーという組み合わせでした。

910Rから生まれた限定車たち

この910Rが、Brutale史上もっとも限定車を生んだベースになります。

Brutale 910R Italia — イタリア代表の2006年ワールドカップ優勝記念。代表チームのカラーで仕上げられ、選手一人ひとりに背番号と同じ生産番号の車両が贈られました。タンクにはワールドカップのトロフィーと「Campioni del Mondo 2006」の文字。贈呈された24台を含めて124台のみの生産です。

Brutale 910R Hydrogen(2007年末) — イタリアの服飾ブランドHydrogenとのコラボ。黒いエンジンと、白/緑/赤/黒というブランドカラー。中身は標準の910Rと同じで、100台限定

Brutale 910R Wally(2008) — 高級ボートビルダーのWally Yachtsとの共同開発。118台という数字は、同社の名艇118 WallyPowerの全長(118フィート)に由来します。

Brutale 910R Starfighter — カーボン外装と専用カラーの99台。さらに上位のStarfighter Titaniumは、チタン製のマニホールド、リンクパイプ、エキゾーストとカーボン部品を与えられた23台のみです。

Brutale 1078 RR(2007) — 「最も美しいバイク」

2007年のミラノEICMAで初公開され、「最も美しいバイク」賞を受賞しました。F4 RR 312と同じ1078ccエンジンを積む、当時のシリーズ最速・最上位モデルです。

出力は154ps。50mm Marzocchiフォークを刷新し、Brembo製レーシングモノブロックを採用。鍛造アルミの5本星型スポークホイールもBrembo製でした。

※このモデルの出力は資料により147ps、154ps、フルパワー仕様183psなど表記が分かれています。

2008年には時計メーカーJean Richardと提携し、Brutale 1078 RR Jean Richardが限定生産されました。Jean Richard側も「Brutale」の名を冠した限定時計を作っています。

Brutale 989 R(2008)

910ccエンジンをオーバーボアして982ccとし、142psを発生。50mm Marzocchiは4mmストロークが増え、リアはフルアジャスタブルのSachs、ブレーキはBrembo製4ポットラジアルキャリパーとなりました。

第3章:第2世代(2010-2016)

ハーレーダビッドソン傘下となった2009年末、Brutaleは大幅に生まれ変わります。実に85%の部品が再設計されました。

Brutale 990 R(2010)

1078のクランクシャフトを流用しつつボアを小さくすることで998ccを得た、これまでよりロングストロークな設計。振動を抑えるバランスシャフトも搭載されました。出力は139psです。

フレームはよりコンパクトになり、スイングアームは延長。MV Agusta専用設計の50mm Marzocchiフォーク、Brembo製4ポットキャリパーとNHKのディスク、そして重力鋳造による新設計ホイール。シートは805mmから830mmへと上がり、タンク容量は23Lに拡大されました。

Brutale 1090 RR(2010)

1078ccを積むレンジトップ。990Rに対してスリッパークラッチ、ステアリングダンパー、キャストホイール、リアショックの更新、Bremboのレーシングブレーキが与えられます。ヘッドカバーはどちらのカラーでも赤。2013年からはABS装備のBrutale 1090 RR ABSも設定されました。

サーキット専用のアップグレードキットCannonballも存在し、ECU、シリンダーヘッド、カムシャフト、バルブ、チタンエキゾーストの変更で165psまで引き上げられます。カーボン外装込みのキットでした。

この世代の特別なBrutale

Brutale 990 R Brand Milano(2010) — 2010年のミラノEICMA後にミラノ市へ贈られた1台限りの特別車。ドゥオーモ、スフォルツェスコ城、スカラ座を描いたグラフィックが入ります。

Brutale 990 R LE 150th Anniversary(2010年末) — イタリア統一150周年を記念した150台限定。単座仕様でスポイラーを装備し、レッド/ホワイト/ブラックの3色すべてにイタリア国旗の赤・白・緑があしらわれています。

Brutale 920(2011) — 入門グレード

ボアを縮小して921ccとした新バリエーション。クランクシャフトは990と1090に共通です。出力129ps/10,500rpmで、当時のBrutaleとしては手の届きやすい価格設定でした。

Brutale 1090 RR Corse(2013) — 158ps

限定版として発表され、出力は158psまで向上。Öhlins Nix 43mmフォークと鍛造ホイールを装備し、タンデムシートカバー、フロントフェンダー、リアハガーをカーボン化。ルビーメタリックレッド/パールホワイトに黒いフレームという仕上げでした。

第4章:3気筒への転換(2012-)

Brutale 675(2012) — 逆回転クランクの登場

F3をベースに、2011年のミラノEICMAで初公開。逆回転クランクを持つ3気筒は108psを発生し、F3のエンジンよりわずかに出力は低いものの、低回転域のトルクは上回るという味付けです。

3気筒は4気筒よりコンパクトなため、フレームをより小さくし、スイングアームを延長できました。43mm Marzocchi倒立フォーク、Sachsリアショック、BremboブレーキはいずれもF3譲りです。

Brutale 800(2013)

F3 800の798ccユニットを転用し125ps。翌2014年にはABS装備のBrutale 800 ABSが追加されました。

同じ2014年に登場したBrutale Dragster 800は、200/50-17というピレリの極太リアタイヤを履くストリートファイター。これは後にDragsterシリーズとして独立していきます。

Brutale 800 RR(2015) — 最速の3気筒Brutale

50mmスロットルボディ、新型エアボックス、1気筒あたり2本のインジェクター、抜けのよいエキゾースト。これで標準比15ps増の140psを得ました。

43mm Marzocchi倒立フォークにはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングが施され、「エイジドゴールド」の仕上げに。2018年式ではエンジンの改良でパワーバンドが広がり、ミッションを刷新してEAS 2.0クイックシフターを搭載、ホイールも軽量化されました。

Brutale 800 RR SCS(2020) — クラッチのいらないBrutale

2018年にTurismo Veloceで初採用されたSCS 2.0(Smart Clutch System)をBrutaleに展開したモデル。

Rekluse製の遠心式クラッチをベースに電子制御を加えたもので、レバーで通常どおり操作することも、システムに任せきることもできます。アイドリング状態でクラッチを使わずギアを入れられ、スロットルを開ければ自動的に繋がる。しかも通常のクラッチに対して重量増はわずか36gです。

3気筒時代の限定車

Brutale 800 RC(2018) — シリーズで最もレース志向の350台限定。SC-Project製のチタン&カーボンエキゾーストにより150ps/12,800rpmを発生します。外装の多くをカーボン化し、F4 RCと同じ赤い鍛造ホイールを装着。デジタルメーターのカバーにシリアルナンバーが入ります。

Brutale 800 RR LH44 — ルイス・ハミルトンとのコラボによる144台限定。彼がF1で勝利を重ねた「44」の数字が、そのまま台数になっています。

Brutale 800 RR Pirelli(2019) — ピレリとの協業モデル。F4のホイールと、より太いリアタイヤを装着し、ヘッドライトの形状を変更、格納式のタンデムグラブレールを備えます。

Brutale 800 Rosso(2019年末) — エントリー向けのRossoコレクションの一員。ホイールは切削加工なしのプレーン仕上げとなり、アンダーガードは非装備。エンジンは110psにデチューンされています。

第5章:4気筒の帰還(2019-)

Brutale 1000 Serie Oro(2019) — 世界最速のネイキッド

2018年のミラノEICMAで「ショーで最も美しいバイク」に選ばれ、MV Agusta自身が「市販ネイキッド最速」を謳った一台です。

998ccの4気筒を熟成させ、208ps/13,450rpm。オプションのArrow製エキゾーストと専用ECUを組めば212psに達します。

Öhlinsの電子制御サスペンションは、ショックとステアリングダンパーを専用ECUが管理。ブレーキはBrembo Stylemaで、ABSはBosch 9.1。外装とホイールリムにはカーボンを多用しています。ファイアレッドの車体に、スイングアームマウント、フォークレッグ、ボトムヨークが金メッキ。300台限定でした。

Brutale 1000 RR(2020) — 量産版

2019年のEICMAで発表された、Serie Oroの量産バージョン。Serie Oroがチタンを使っていた部分をスチールのボルト・ナットに、ホイールは鍛造アルミに変更しています。それでも208ps、乾燥186kg、2次バランサーによる振動54%削減という中身は変わりません。

Brutale 1000 RS(2021)

1000 RRに対して「ややツーリング寄りの選択肢」として追加されたモデル。エンジンとフレームはRRのまま、サスペンション、ブレーキ、シートを変更し、長距離での快適性を高めています。

Brutale 1000系の限定車

モデル台数内容
Brutale 1000 Nürburgring2022150台チタンコンロッド&バルブ、軽量カムシャフト、バルブリフターにDLCコーティング
Brutale 1000 RR Blue & White M.L.20221台910R Italiaへのオマージュ。車体番号001/001、フレームとスイングアームプレートをマットゴールドで仕上げ
Brutale 1000 RR Assen2024300台Assenでの35勝を記念。Rotobox製カーボンホイール
Brutale 1000 ABT2025130台四輪チューナーABTの創業130周年
Brutale 1000 / 1000 RR Ottantesimo2025各500台創業80周年。新ECU、カムシャフト変更、クラッチ50%軽量化

第6章:新世代へ(2026)

Brutale Serie Oro — 25周年の答え

Brutale誕生25周年を機に、2026年にすべてが新しくなりました。300台限定のSerie Oroが、その先陣を切ります。

心臓はEnduro Veloce用を大幅に発展させた931ccの新型3気筒「950 EVO」。シリンダーヘッドを全面再設計し、大径のスチールバルブ、吸排気ポートの再形状、最適化された燃焼室。ブリッジドボックス構造の新ピストンで圧縮比13.4:1、燃焼圧に耐えるファイアリング式ヘッドガスケット、見直されたオイル冷却系。バルブリフターにはDLCコーティング、トルクアシスト機能付きの新スリッパークラッチも与えられました。

出力は148ps/11,200rpm、トルク107Nm/8,400rpm。しかもトルクの85%を3,500rpmから使えるという実用性の高さです。逆回転クランクも健在。

フレームはスチールトレリスとアルミのスイングアームピボットプレートを組み合わせたハイブリッド構造で完全新設計。ホイールベース1,433mm、乾燥重量195kg。Öhlins、Brembo Hypure、そしてMV Agusta専用開発のTermignoni製チタンエキゾーストを標準装備し、Euro 5+に適合します。アルカンターラのシート、バックライト付きスイッチ、GPSトラッキングとジオフェンシング、クルーズコントロール、双方向クイックシフター。5年保証つきです。

市場投入は2026年第2四半期。カーボンやÖhlinsを省いたベースモデルが、この直後に続く予定です。

世代の見分け方

  • 気筒数 — 675/800は3気筒、それ以外の数字(750/910/920/989/990/1000/1078/1090)は4気筒。ただし2026年の新型Brutaleは3気筒で950 EVOを積みます
  • 車名と実排気量のズレ — 989Rは982cc、990Rは998cc、1090RRは1078cc、920は921cc。車名と実際の排気量は一致しません
  • シート高 — 2010年の第2世代から805mm→830mmに上がっています
  • ヘッドカバーの色 — 赤いヘッドカバーは上位グレードの目印になっている時期があります

Brutale全モデル スペック一覧

モデル気筒排気量最高出力台数
Brutale 750 Serie Oro20014749.5cc127ps300
Brutale 750 S20024749.5cc127ps
Brutale America / CRC / Mamba / Gladio2002-20064749.5ccキット各300
Brutale 910 S20054909cc136ps/11,000rpm
Brutale 910 R20054909cc144ps(レース排気時)
Brutale 910R Italia20064909cc144ps124
Brutale 910R Hydrogen20074909cc144ps100
Brutale 910R Wally20084909cc144ps118
Brutale 910R Starfighter20064909cc144ps99
Brutale 910R Starfighter Titanium20064909cc144ps23
Brutale 1078 RR200741,078cc154ps
Brutale 1078 RR Jean Richard200841,078cc154ps限定
Brutale 989 R20084982cc142ps
Brutale 990 R20104998cc139ps
Brutale 990 R Brand Milano20104998cc139ps1
Brutale 990 R LE 150th Anniversary20104998cc139ps150
Brutale 1090 RR201041,078cc
Brutale 1090 RR Cannonball(キット)201041,078cc165ps
Brutale 92020114921cc129ps/10,500rpm
Brutale 1090 RR Corse201341,078cc158ps限定
Brutale 67520123675cc108ps
Brutale 80020133798cc125ps
Brutale 800 RR20153798cc140ps
Brutale 800 RC20183798cc150ps/12,800rpm350
Brutale 800 RR LH4420183798cc140ps144
Brutale 800 RR Pirelli20193798cc140ps限定
Brutale 800 Rosso20193798cc110ps
Brutale 800 RR SCS20203798cc140ps
Brutale 1000 Serie Oro20194998cc208ps(212ps)/13,450rpm300
Brutale 1000 RR20204998cc208ps
Brutale 1000 RS20214998cc208ps
Brutale 1000 Nürburgring20224998cc208ps150
Brutale 1000 RR Blue & White M.L.20224998cc208ps1
Brutale 1000 RR Assen20244998cc208ps300
Brutale 1000 ABT20254998cc208ps130
Ottantesimo(Brutale RR / 1000 / 1000 RR)20253・4798cc・998cc各500
Brutale Serie Oro(950 EVO)20263931cc148ps/11,200rpm300

※出力は本国仕様の公称値です。日本仕様は異なる場合があります。

25年で変わらなかったもの

749ccから1078cc、そして3気筒へ。Brutaleのエンジンは何度も入れ替わりました。それでも2026年の新型を見て、誰もが一目でBrutaleだと分かる。

丸いヘッドライト、むき出しのトラスフレーム、そして右側に集められたエキゾースト。タンブリーニが2001年に描いた輪郭は、四半世紀を経てもまだ通用しています。

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【主な参照元】MV Agusta公式サイトバイクブロス バイクカタログ同 Brutale 990R購入ガイドMoto Square 1090RR試乗レビューMotor-Fan Brutale 1000RRRIDE HI Brutale 800 RossoWikipedia(英語版)MV Agusta Brutale series
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