E-E-A-Tは、評価者が略しただけの言葉だった|Google公式が語った起源とランキングシステムの実際

検索を学ぶ

E-E-A-Tを「対策」しようとして、著者プロフィールを全ページに置いたり、監修者を立てたり、文字数を増やしたりする。この数年、日本のSEO界隈でよく見た動きです。

ところがGoogle自身の説明を聞くと、この言葉の出自はかなり違います。検索品質評価者たちが、expertise・authoritativeness・trustworthinessと毎回書くのに疲れて、自然に略した造語だったというのです。公式な設計から生まれたものではありません。

この記事では、公式ポッドキャスト「Search Off the Record」でE-E-A-Tとランキングシステムを扱った回から、この言葉が何であって何でないのか、そして品質という言葉の中身を整理しました。

この記事は「Search Off the Record 全54回まとめ」のクラスタ記事です。他のテーマは元記事から辿れます。


E-E-A-Tはどこから来たのか

第76回(2024-06-27)は、検索品質のプロダクトマネジメント担当ディレクターであるElizabeth Tucker氏がゲストの回です。Googleに約19年在籍し、うち15年をデータサイエンティストとして過ごした人物です。

元は10〜20ページの文書だった

Search Quality Rater Guidelinesは、もともとトピック的な関連性に主眼を置いた10〜20ページの文書から始まったそうです。現在の分量を考えると、まったく別物です。

そこから評価者のフィードバックを反映しながら進化してきました。そして途中で、評価者たちが自然に使い始めた略語がありました。

「書くのに疲れた」から生まれた

E-A-T——後にE-E-A-T——という言葉は、評価者たちがexpertise、authoritativeness、trustworthinessと毎回書くのに疲れて自然に略した造語だと説明されています。公式な設計から生まれたものではない、と。

この一点を知っているだけで、E-E-A-Tとの向き合い方はかなり変わると思います。設計図ではなく、現場の略語だったわけです。

ランキング信号との対応はない

そのうえで、明確な否定があります。

“There is no ranking signal that’s a one-to-one match with E-E-A-T.”(第76回、2024-06-27)

E-E-A-Tは特定のランキング信号と一対一で対応するものではなく、単一のランキングファクターとして直接評価されているわけでもない。位置づけとしては、**評価者に重要な考慮事項を思い出させるための記憶術(mnemonic device)**である、と説明されています。

さらに、検索内容によって重要度が異なるとも。健康関連のクエリでは重要ですが、可愛い子猫の検索ではさほど重要ではない、という例が挙がっています。

つまり「E-E-A-Tスコア」のようなものを全ページ一律に上げようとする発想は、前提から成り立っていないことになります。

注意: 第76回は収録から2年以上が経過しており、E-E-A-Tやランキングシステムについての説明は更新されている可能性があります。


専門家の著者は、必須要件ではない

第63回(2023-08-22)では、ガイドラインの読み方についてもう一歩踏み込んだ説明があります。

E-E-A-Tガイドラインに出てくる「専門家の著者」という例示は、文字通りの必須要件ではないとされています。本質は、コンテンツ全体で専門性を示せているかどうかだ、と。

同じ回で、著者情報(byline)を全ページに必須で載せる必要があるという解釈も否定されました。読者にとって意味がある場合のみ有効である、というのが説明です。

そして文字数についても、多いほど評価されるという通説が明確に否定されています。Googleはどこにも文字数要件を定めていない、と。

この3つは、日本のSEO記事でセットで語られがちな施策です。著者プロフィールを置き、監修者を立て、文字数を増やす。少なくともGoogle側の説明では、これらが直接効くという話にはなっていません。


「アップデート」から「ランキングシステム」へ

第63回のもう一つのテーマが、呼び方の整理です。

従来は「Panda update 2.1」のように、すべてを「アップデート」と呼んでいました。混乱を避けるため、Googleは仕組みそのものを「ランキングシステム」と呼び、システムが更新された場合のみ「アップデート」と呼ぶという整理をしました。

ランキングシステムの一覧ページや個別の解説ページ、Search Status Dashboardの整備も、この流れの一部です。どのシステムが更新されたか、何を学べばよいかを示す取り組みだと説明されています。

アップデートは増えていない

ここは誤解されやすい部分です。

“it’s not that we’re doing more updates to our ranking systems than ever before”(第63回、2023-08-22)

ランキングアップデートが増えたと感じるのは、実際に更新頻度が増えたからではなく、Googleが以前より多く情報を公開するようになったためだと説明されています。

SEO業界の体感として「最近アップデートが多い」と語られることがありますが、少なくともこの時点でのGoogleの説明は逆でした。見えるようになっただけ、ということです。

逆算されることは望んでいない

システムを個別に文書化したことについて、Googleの意図も語られています。サイト運営者が特定システムの仕様に合わせてコンテンツを「逆算」で作ることは望んでおらず、あくまで人間本位の役立つコンテンツ作りが本質であるべきだ、と。

ページエクスペリエンスについても同様の説明があります。Core Web Vitalsのような個別指標の達成度で判断するものではなく、全体的なユーザー体験の良さという「マインドセット」として捉えるべきだ、と。

この回では、同一サイトから検索結果に2件までしか表示しない「サイト多様性システム」や、Newsチームが発表した「topic authority」という新しいランキングシステムについても言及されています。

注意: 第63回は収録から約3年が経過しています。特にヘルプフルコンテンツシステムはその後コアランキングシステムに統合されるなど、Googleのランキングシステムの構成は変化している可能性が高い部分です。この回を読む際は、システム一覧の現在の内容と突き合わせてください。


検索品質は、どう測られているか

第76回に戻ります。品質という言葉が社内でどう扱われているかが語られていて、ここが個人的にはいちばん面白かった部分です。

1つを直すと、50が壊れる

1つの検索を改善することで、他の50の検索を悪化させる可能性がある。 だから集団規模での測定と、個別クエリの特定分析の両方が必要になる、と説明されています。

検索品質チームは、定性・定量調査を行うUX研究者と、大規模測定を行うデータサイエンティストが相互補完的に協力する体制になっているそうです。

クエリの優先順位付けは、頻度と深刻度のバランスで決まります。金融詐欺のような稀だが深刻な問題も、日常的で深刻度の低い問題も、両方が研究対象になる、と。

多くのシステムは「良いものを見つける」方向に働く

ウェブスパム対策のような一部のシステムは順位を下げる方向(デモーション)に働きますが、多くの検索品質システムは良いものを見つける方向に働くとされています。トピック適合性の改善が代表例です。

「対策」という言葉で語られがちなSEOの世界とは、前提の置き方が違います。

測定できることと、重要なこと

検索の改善を測定するのは非常に難しい、という話の中で出てくる原則がこれです。

重要なことすべてが測定可能ではなく、測定可能なことすべてが重要ではない。

具体例として、検索クエリ数が挙げられています。クエリ数の増加は必ずしも良い指標ではありません。短期的には、検索がうまく機能していないときにこそユーザーはより多く検索するからです。そのためGoogleは、実験の最適化指標としてクエリ数を使わないそうです。

逆に、真に改善した例として挙がっているのがタイ語のセグメンテーション(単語分割)です。検索体験が劇的に改善し、検索量も大きく増加しました。同じ「検索量の増加」でも、意味がまったく違うわけです。

自社のKPIを考えるうえでも、示唆のある話だと思います。


では、何をすればいいのか

第66回(2023-11-21)は、注力すべきポイントの優先順位を扱った回です。

まず技術的な基礎

“if Googlebot cannot reach your site or the rendering fails miserably”(第66回、2023-11-21)——Googlebotがサイトにアクセスできない、レンダリングが失敗する、ページに文章(トークン)がない。こうした基礎的な問題があると、Googleにできることは限られます。技術SEOの基本は依然として重要だ、というのがこの回の出発点です。

トラフィック低下の調査手順も示されています。まずページがインデックスされているか確認し、URL検査ツールでGooglebotがアクセスできるか、canonicalが正しく選ばれているかを順に見る。そしてデバッグはホームページから始めるのがよい、と。ホームページはGoogleにとって最重要ページであり、インデックスされていなければ問題がある可能性が高いためです。

トラフィック数だけを見ない

ここでGoogle自身の失敗談が語られます。

Google Search Centralのドキュメントは、動画向けに過剰最適化していた結果、「Google」というまったく無関係なクエリで大量のトラフィックを得ていました。そこで過剰なキーワードを削除する「deSEO」を実施したところ、トラフィックは落ちましたが、無関係な内容に対するネガティブフィードバックが減少し、良い結果だったとされています。

トラフィックが減ることが常に悪いわけではない。この事例は、レポートの読み方そのものに関わる話だと思います。

低トラフィック=低品質ではない

トラフィックが低いコンテンツを削除する必要はない、と明言されています。低品質なら修正・削除すべきですが、低トラフィックは必ずしも低品質を意味しない。統合やリダイレクトは通常のサイトメンテナンスとして問題ない、という位置づけです。

コンテンツ整理の際に、アクセス数の下位何%を機械的に削除する、という運用をしている場合は考え直す余地があります。

品質の定義はシンプル

コンテンツ品質は複雑に考えず、ユーザーがページに来て達成したいことを助けられているかというシンプルな視点で捉えるべきだ、とされています。

そして、既に多くの人が書いている一般的なページを新たに作っても価値は低い。まだ書かれていないニッチな視点や独自の情報を提供することで、新規サイトでも上位表示のチャンスがある、と。

第63回では、この裏返しの例も出ています。旅行ブログで不要な前置きやアフィリエイトリンクが多く、本当に知りたい情報(駐車場所など)が埋もれている問題。レシピブログで祖母の思い出話が長く続き、肝心のレシピになかなか辿り着かない、という話。ユーザーが「SEOっぽいコンテンツが嫌だ」と感じるのは、検索エンジン向けに書かれた不自然さを感じ取っているためだ、と説明されています。

なお細かい点ですが、タイトルタグとH1見出しは同一である必要はなく、関連していれば十分とも述べられています。


AI時代でも変わらないこと

第109回(2026-05-01)は、SafeSearchチームを率いるNikola Todorovic氏がゲストの回です。

まず前提として、AIが検索にとって新しい現象だという業界の見方が訂正されています。AI機能は最近始まったものではなく、生成AIブーム以前から検索の裏側で長年使われてきた。SafeSearchの画像・動画判定や、BERT、MUMといった公表済みの技術がその例です。

そのうえでサイト運営者へのアドバイスとして語られているのは、ユーザーへの価値提供を続けることと、AIツールを賢く活用すること。そして単なるコンテンツの量産は価値を生まないと明言されています。

印象的な例が挙がっています。Martin氏がジョイスティックを買ったときの店員とのやりとりを引き合いに、スペックの言い換えでしかない記事の価値の低さを説明する、というものでした。製品ページに書いてあることを並べ直しただけの記事は、AIがあってもなくても読む理由がない、ということです。

第76回の「良いものを見つける方向に働く」という話と、第66回の「まだ書かれていないニッチな視点」という話は、この地点で合流します。


Googleが否定した、品質・ランキング関連の6つの通説

通説Googleの説明出典鮮度
E-E-A-Tは単一のランキングファクターとして評価されている特定のランキング信号と一対一で対応するものではない第76回 2024-06-27要確認
文字数が多いほど評価される明確に否定。文字数要件はどこにも定めていない第63回 2023-08-22要確認
著者情報(byline)は全ページに必須読者にとって意味がある場合のみ有効第63回 2023-08-22要確認
低トラフィックのコンテンツは自動的に削除すべき否定。統合やリダイレクトで対応すべき第66回 2023-11-21要確認
titleとH1は完全に同一にすべき同一である必要はなく、関連していれば十分第66回 2023-11-21要確認
AIは検索にとって新しい現象以前から検索システムの裏側で長年利用されてきた第109回 2026-05-01新しめ

日本のサイト運営者にとって

これらの回で日本語検索や日本市場に特化した言及はありません。ただ、日本のSEO実務でよく見る運用と食い違う点がいくつかあるので、そこを挙げます。

監修者・著者プロフィールの一律設置

第63回では、専門家の著者という例示は文字通りの必須要件ではなく、bylineも読者にとって意味がある場合のみ有効だとされています。医療や金融のように専門性が読者の判断材料になる領域では意味がありますが、全ページに機械的に置くことの根拠は、Googleの説明の中には見当たりません。

文字数を目標値にする運用

第63回で明確に否定されています。競合の平均文字数に合わせるといった進め方は、少なくとも公式の説明では裏付けがありません。

低アクセス記事の一括削除

第66回のとおりです。低トラフィックと低品質は別物とされています。削除するなら、アクセス数ではなく内容で判断する必要があります。

「E-E-A-T対策」という枠組みそのもの

第76回の説明を踏まえると、E-E-A-Tは評価者向けの記憶術であって、一対一で対応する信号はありません。社内やクライアントに施策を説明する際、この枠組みで話すと前提から食い違う可能性があります。

アップデート情報の追いかけ方

第63回で、アップデートが増えたように見えるのは公開量が増えたためだと説明されています。更新のたびに対応を迫られている感覚がある場合、それは頻度ではなく可視性の問題かもしれません。


まとめ

E-E-A-Tとランキングについて語られてきた内容を並べると、共通しているのは**「名前が付いているものを、名前どおりに攻略しようとするな」**という一点でした。

E-E-A-Tは評価者が略しただけの言葉で、対応する信号はありません。ランキングシステムに名前が付いたのは、逆算してもらうためではなく、何が起きたかを説明するためでした。ページエクスペリエンスも指標の達成度ではなくマインドセットだ、とされています。

代わりに繰り返し出てくるのは、かなり地味な話です。Googlebotが到達できること。レンダリングが成功すること。ページに読めるテキストがあること。 そのうえで、まだ書かれていない視点を出せているか。ユーザーがそのページで達成したいことを助けられているか。

Google自身が自社ドキュメントを「deSEO」してトラフィックを落とし、それを良い結果だったと語っている。この事例が、たぶんいちばん分かりやすい姿勢の表明だと思います。

なお、この記事で「要確認」と付けた項目は、収録から時間が経っており説明が更新されている可能性があります。特にランキングシステムの構成は変化しているので、developers.google.com の一覧で現在の状態を確認してください。

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