日本語検索だけを狙ったGoogleアップデート2件の全記録|2017年に何が起きたか

検索を学ぶ

Googleが特定の言語だけを対象にアップデートを実施することは、めったにありません。

日本語検索の場合、それが2回だけあります。2017年2月3日と、同年12月6日。どちらもGoogleの公式ブログで発表されており、対象は日本語検索のみと明記されています。

海外のSEOメディアが作るアップデート年表に、この2件はまず載りません。日本語圏の記事でも、多くは「健康アップデート」という通称で1行触れられる程度です。しかしこの2件で起きたことは、翌2018年に世界規模で起きたことの先取りでした。

この記事では、その2件を記録として残します。

背景:2016年、日本の検索結果に何が起きていたか

キュレーションメディアという業態

2015年前後、日本のウェブには特定の型を持ったメディアが大量に生まれていました。

作り方はこうです。検索需要のあるテーマを選ぶ。既存の記事を集める。クラウドソーシングで募った書き手に、参考記事のURLを渡して書き直させる。1本あたりの単価は数百円から数千円。取材はしない。専門家にも当たらない。

これを月に数百本、数千本の規模で回します。検索で上位を取れば広告収益が積み上がる。事業としては、極めて合理的な設計でした。

WELQ問題

この構造が破綻したのが2016年11月です。

DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」で、医学的根拠の乏しい記事や他サイトからの無断転用が次々に指摘されました。健康や病気について検索した人が、資格を持たない書き手の記事にたどり着く。しかもその記事が、Googleの検索結果で上位に表示されている。

11月末にサイトは全記事が非公開となり、同社が運営していた他のメディアも順次停止。12月には記者会見が開かれ、SEOとメディア運営の問題が一般ニュースとして扱われる事態になりました。

ただ、検索の観点で見たときの問題はもっと単純です。Googleが、健康に関わる情報の信頼性を判定できていなかった。サイトが閉じたのは運営会社の判断であって、検索エンジンが止めたわけではありません。

1発目:2017年2月3日「日本語検索の品質向上にむけて」

WELQ問題からおよそ2か月後、Googleは日本語の公式ブログで「日本語検索の品質向上にむけて」を公開しました。

発表の内容

要点は3つです。

1. ウェブサイトの品質評価方法に改善を加えた
ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果の上位に自分のページを表示させることに主眼を置いた、品質の低いサイトの順位を下げる。

2. その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つサイトが上位に表示されやすくなる
Googleは「オリジナルで有用なコンテンツ」という表現を使っています。

3. この変更は日本語検索で表示される低品質なサイトへの対策を意図している
対象が日本語検索であることが、はっきり書かれています。

投稿者はGoogleのソフトウェアエンジニアで、日本語圏に向けて日本語で書かれた発表でした。

何が対象になったのか

Googleは具体的なサイト名を挙げませんでしたが、示された条件から対象は明らかでした。

  • 自分ではコンテンツを作らず、他者のコンテンツをつぎはぎしたもの
  • 他者のコンテンツを、検索エンジンと親和性の高い形に整えただけのもの
  • オリジナリティを欠く低品質なコンテンツを、大量に抱えているもの

キュレーションメディアとリライトメディアが、そのまま該当します。

Googleは、これで終わらないと書いていた

この発表でいちばん見落とされているのは、末尾の一文です。

Googleは「この変更で、Googleが認識する日本語検索の問題すべてを解決できるとは考えていない」という趣旨のことを、わざわざ書き残しています。継続的に改善を行っていく、とも。

公式発表としては、かなり踏み込んだ書き方です。そして実際、10か月後に2発目が来ました。

効果は限定的だった

結論から言えば、2月のアップデートは期待されたほど効きませんでした。

狙われたはずのキュレーションサイトの多くは順位を保ち、医療・健康分野の検索結果は不安定なままでした。「肩こり」「頭痛」といったクエリで、依然として出所の怪しい情報が上位に出る状況が続きます。

【業界記録】 「効果が限定的だった」という評価は、当時の業界の観測に基づくものです。Googleが2月のアップデートの効果について後から言及したことはありません。

2発目:2017年12月6日「医療や健康に関連する検索結果の改善について」

同じ年の12月6日、Googleは2件目の発表を出します。

発表の内容

日本語検索におけるページの評価方法を更新した、という内容です。狙いは医療や健康に関する検索結果の改善で、医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなるとしています。

そして、この発表で最も目を引く一文がこれです。

本アップデートは、医療・健康に関連する検索のおよそ60%に影響する。

「60%」という数字の異常さ

Googleがアップデートの影響範囲を数値で明示することは、ほとんどありません。

2011年のPandaで「米国検索の約12%」、2011年のFreshness Updateで「約35%」。この種の数字が出た例は数えるほどです。しかもそれらは全検索に対する割合で、特定ジャンルに絞って「60%」と言い切ったケースは他に見当たりません。

この数字は、Googleがこの変更に相当な確信を持っていたことの表れだと読むべきだと思います。日本語検索の医療・健康分野を、ほぼ作り替えるという宣言に近い。

実際に何が起きたか

順位を落としたのは、次のようなサイトでした。

  • 医療系の口コミ・体験談サイト
  • 健康食品の通販サイト、ランキングサイト
  • 個人運営の健康情報ブログ
  • クリニックの集患目的で作られたアフィリエイト色の強いメディア

代わりに上位を占めたのは、病院、大学、製薬会社、公的機関です。「誰が運営しているか」が、そのまま順位に出るようになりました。

日本の医療・健康系アフィリエイト市場は、このアップデートで実質的に終わったと言っていい規模の変化でした。

【業界記録】 「健康アップデート」「医療アップデート」という呼称は日本語圏で定着していますが、どちらもGoogleの正式名称ではありません。Googleはこのアップデートに名前を付けていません。

1年後、世界で同じことが起きた

2018年8月1日、Googleはグローバルなコアアップデートを実施します。のちに業界が「Medic」と呼ぶことになる更新です。

このとき最も大きく変動したのが、やはり医療・健康分野でした。上がったのは公的機関と専門機関、下がったのは体験談ベースのサイトとアフィリエイトメディア。日本で前年に起きたことと、同じ形です。

ここからSEOの世界では、YMYL(人の健康や財産に重大な影響を与えうる領域)とE-A-T(専門性・権威性・信頼性)という概念が一気に共通語になっていきます。

因果関係については、断定しません

ここは慎重に扱うべき箇所です。

Googleが「日本での対応を世界に展開した」と述べたことは、一度もありません。2017年の2件と2018年8月のコアアップデートを結ぶ公式な言及も存在しません。だから因果としては書けません。

ただし、事実として並べればこうなります。

  • 2017年2月、Googleは日本語検索の低品質サイトに対処した
  • 2017年12月、日本語検索の医療・健康分野を作り替えた
  • 2018年8月、世界規模のコアアップデートで医療・健康分野が最も動いた

同じ方向を向いていた、とは言えます。そして日本のSEO担当者は「誰が書いたかが問われる検索」を、世界より1年早く経験していたことになります。

なぜ日本だけだったのか

Googleは理由を説明していないので、ここからは考察です。断定はできません。

いくつか、条件が揃っていたことは指摘できます。

問題が可視化されていた。WELQ問題は一般ニュースになり、社会的な批判を浴びました。検索結果の品質問題が、これほど明確に世論として表面化した例は他国でもそう多くありません。

日本語という言語的な閉鎖性。日本語のコンテンツはほぼ日本国内でしか生産・消費されません。対策の効果と副作用を、他言語に影響させずに検証できる環境だったとは言えます。

アフィリエイト市場の規模。日本の検索流入は、アフィリエイトを収益源とするメディアの比率が高い構造にあります。量産型コンテンツが集中しやすい環境でした。

いずれも状況証拠です。Googleがどう判断したかは分かりません。

その後、日本語限定のアップデートは行われていない

2017年12月以降、Googleが日本語検索だけを対象にしたアップデートを実施した記録はありません。2026年7月時点で、日本語限定のアップデートはこの2件のままです。

これをどう読むか。ひとつの見方は、グローバルなアップデートで対応できる体制が整ったということです。2018年以降、コアアップデートは年3〜4回のペースで定期実施されるようになり、言語ごとの個別対応をする必要が薄れました。

もうひとつの見方は、2017年の2件が例外的な緊急対応だったというものです。社会問題化した状況への対処であって、通常の運用ではなかった。

どちらが正しいかは分かりませんが、少なくとも日本語検索が特別扱いされる時代は終わっていると考えたほうが実務的です。日本のSEOは、グローバルなアップデートの文脈で読む必要があります。

この2件から学べること

1. 日本語検索は海外と同じ動きをするとは限らない

2017年の2件は、その最も極端な例です。海外のSEOメディアが「今回の影響は軽微」と報じたアップデートで、日本語検索では大きく動いた、という事例は他にもあります。

海外の情報を追うことは重要ですが、自分の担当領域で実際に何が起きたかを測る手段を持っておくべきです。

2. Googleは、影響範囲を数字で言うときがある

「60%」は珍しい情報開示でした。公式発表を丁寧に読むと、通常は書かれない情報が混ざっていることがあります。要約記事だけを読んでいると、こういう部分は落ちます。

3. 一度で終わらないことがある

2月の発表には「これで全部は解決しない」と書かれていて、実際に10か月後に2発目が来ました。Googleが自分で予告していたわけです。

アップデートの発表文は、次に何が来るかのヒントを含んでいることがあります。

よくある質問

日本語検索だけを対象にしたアップデートは何件ありますか?

2件です。2017年2月3日の「日本語検索の品質向上にむけて」と、2017年12月6日の「医療や健康に関連する検索結果の改善について」。どちらもGoogleの公式ブログで発表されています。

「健康アップデート」は正式名称ですか?

違います。日本語圏のSEO業界で付けられた通称で、Googleはこのアップデートに名前を付けていません。「医療アップデート」も同様です。

健康アップデートの影響は今も続いていますか?

2018年以降のコアアップデートで評価は継続的に更新されているため、2017年の判定がそのまま残っているわけではありません。ただし医療・健康分野で専門機関が優遇される傾向は、現在も続いています。

今後また日本語限定のアップデートはありますか?

2017年12月以降、実施された記録はありません。予測はできませんが、現在のGoogleは言語横断のアップデートで対応する体制になっています。

参照した情報源

アップデート全体の流れはGoogleアップデートの歴史、E-E-A-Tの詳細はE-E-A-TとYMYLの正体でまとめています。

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