「MV Agustaの純正部品を注文したら、納期が半年と言われた」
「在庫確認だけで数か月かかっている」
「部品によっては1年以上待っている」
MV Agustaのオーナーの間では、こうした部品供給に関する話を耳にすることがあります。
しかも、ここで問題にしているのは、社外品やアフターマーケット製品ではありません。
MV Agustaが純正部品として供給するメーカー純正部品の話です。
「いくらMV Agustaが少量生産のメーカーとはいえ、部品を作って届けるだけなのに、なぜ半年も1年もかかるのか?」
製造業の経験がある人ほど、そう疑問に感じるかもしれません。
実際、この問題を単純に「MV Agustaの工場の生産能力が低いから」と考えると、現在の状況はうまく説明できません。
調べていくと、もっと複雑な構造が見えてきます。
この記事の結論
MV Agustaの純正部品問題は、単純な「工場の製造能力不足」だけでは説明できません。少量生産メーカーならではの購買力の弱さ、外部サプライヤーへの依存、KTMとの提携・分離によるサプライチェーンの変化、部品在庫管理、そして物流体制の再構築が複雑に絡み合っています。
- そもそもMV Agustaは「部品をほとんど外注している会社」なのか?
- MV Agustaのものづくりは「全部自社」でも「全部外注」でもない
- ここがMV Agustaのサプライチェーンを難しくする
- 「部品メーカーに注文すればすぐ作れる」は、実はそう簡単ではない
- 少量生産の「専用部品」は意外と厄介
- さらに「MV専用部品」になると話が変わる
- 「在庫確認中」が、実は単純な在庫確認ではない可能性
- では、MV Agustaはどんな部品を外部から調達しているのか?
- 外注すること自体は問題ではない
- ここで重要になるのが「購買力」
- なぜKTMの購買力が重要だったのか?
- ところが、MV AgustaはKTMから再び独立した
- そしてMV Agusta自身も「サプライチェーンを作り直している」と説明している
- なぜ内製化するのか?
- MV AgustaのVarese工場は、実際にはかなりの製造能力を持っている
- では、なぜ「部品」が問題になるのか?
- MV Agustaのようなメーカーでは、さらに難しい
- さらにMV Agustaはモデルチェンジも多い
- 「最新モデルを作る能力」と「10年前のモデルを修理する能力」は別物
- では「半年待ち」は異常なのか?
- では「1年以上」はどう考えるべきか?
- それでも、MV Agusta自身が「部品供給を改善している」と発表している
- そして現在、部品物流そのものも大きく変わった
- ただし、DHLが入ればすべて解決するわけではない
- つまり、本当の問題は「物流」だけではない
- だから、MV Agustaの部品問題を「工場の問題」だけで説明するのは難しい
- では、MV Agustaは「製造業としてダメ」なのか?
- MV Agustaが本当に解決しなければならないこと
- では、今後MV Agustaの部品供給は改善するのか?
- 一方で、ここからが本当の勝負
- MV Agustaの部品問題を一言で表すなら
- まとめ:MV Agustaの部品問題は「工場」だけを見ても分からない
- 参考資料
そもそもMV Agustaは「部品をほとんど外注している会社」なのか?
まず、ここは大きな誤解を避ける必要があります。
MV Agustaは、エンジンを他社から買ってきて車体に載せるだけのメーカーではありません。
現在のMV Agustaは、イタリア・ヴァレーゼの工場を中心に、製品開発、製造、販売、マーケティング、アフターサービスまでを展開しています。
さらに、現在の931cc 3気筒エンジンについては、MV Agusta自身が「Vareseで設計・開発・製造している」と説明しています。
つまり、MV Agustaには自社でエンジンを製造する能力があります。
これは非常に重要なポイントです。
MV Agustaのものづくりは「全部自社」でも「全部外注」でもない
イメージとしては、次のような構造です。
MV Agusta Varese工場
↓
エンジン・車両開発・車両製造・組立など
↓
一方で……
↓
ブレーキ・サスペンション・電子部品・タイヤ・排気系など
↓
専門メーカーから調達
つまり、MV Agustaは「自社工場を持ちながら、多数の専門サプライヤーと組み合わせて1台のバイクを作るメーカー」です。
これはMV Agustaに限った特殊な方式ではありません。
自動車メーカーや大手バイクメーカーでも、ブレーキ、タイヤ、サスペンション、電子制御部品などを専門メーカーから調達するのが一般的です。
違うのは、MV Agustaが年間数十万台を作る巨大メーカーではないことです。
ここがMV Agustaのサプライチェーンを難しくする
例えば、ホンダやヤマハのような大規模メーカーなら、ある部品を年間何万個、何十万個という単位で発注できます。
ところがMV Agustaは生産規模が桁違いに小さい。
MV Agustaは2024年に約4,000台のモーターサイクルを販売したと発表しています。
もちろん車種や部品によって数量は変わりますが、サプライヤーから見ると、MV Agusta向けの専用部品は非常に小さなロットになりやすいのです。
これが、部品問題を理解するうえで非常に重要になります。
「部品メーカーに注文すればすぐ作れる」は、実はそう簡単ではない
例えば、MV Agusta専用の小さなブラケットが必要になったとします。
普通に考えれば、
MV Agustaが注文
↓
部品メーカーが製造
↓
MV Agustaへ納品
↓
オーナーへ
となりそうです。
しかし実際には、その部品メーカーにも事情があります。
例えば、専用治具が必要だったり、材料を仕入れる必要があったり、製造ラインを空ける必要があったりします。
さらに、年間数百個しか売れない部品なら、部品メーカー側からすると「いつ作るか」という問題が出てきます。
少量生産の「専用部品」は意外と厄介
例えば年間100個しか必要ない部品があったとします。
その部品のためにメーカーが毎月生産ラインを動かすのは効率的ではありません。
そのため、ある程度まとめて生産することがあります。
すると、
「注文したから、すぐ生産開始」
ではなく、
「次にこの部品を生産するタイミングはいつなのか?」
という問題になります。
これだけでも納期は大きく変わります。
さらに「MV専用部品」になると話が変わる
ブレーキパッドのように他車種でも使われる部品なら、比較的調達しやすいケースがあります。
しかし、MV Agusta専用に設計された部品の場合、話は違います。
その部品を大量に作って在庫しておくメリットが、部品メーカー側にはほとんどありません。
さらに車両の生産が終了すると、需要は一気に減ります。
すると部品メーカー側では、
- 専用の金型・治具をどうするか
- 材料をどう確保するか
- いつ再生産するか
- 最低発注数量をどうするか
- 生産ラインをいつ確保するか
といった問題が出てきます。
「在庫確認中」が、実は単純な在庫確認ではない可能性
ここは、MV Agustaの部品問題を考えるうえで非常に重要です。
ディーラーから「メーカー在庫を確認しています」と言われた場合、必ずしも倉庫の棚を見ているだけとは限りません。
例えば、現在庫がなければ、
MV Agusta
↓
部品在庫確認
↓
在庫なし
↓
再生産可能か確認
↓
サプライヤーへ確認
↓
材料・治具・生産枠を確認
↓
納期回答
という流れになる可能性があります。
そうなると、「在庫確認」という言葉の裏側で、実際には再生産の可否を確認していることになります。
これなら、回答に時間がかかることも理解できます。
では、MV Agustaはどんな部品を外部から調達しているのか?
すべての部品について詳細なサプライヤー情報が公開されているわけではありません。
ただし、MV Agustaの現行モデルを見ると、外部の専門メーカーによるコンポーネントが多数使われていることが分かります。
例えばサスペンションではÖhlinsなどの専門メーカーの製品が採用されています。
Superveloce 1000 Serie Oroでは、Akrapovičが専用開発したチタン製エキゾーストも採用されています。
つまり、MV Agustaは「全部を自社工場で作る」のではなく、自社で強みを持つ部分と、専門メーカーに任せる部分を組み合わせているわけです。
外注すること自体は問題ではない
ここは誤解してはいけません。
「外注しているから部品が届かない」という話ではありません。
むしろ、専門メーカーから調達することには大きなメリットがあります。
- 専門メーカーの技術を使える
- 自社で設備を持つ必要がない
- 開発コストを抑えられる
- 品質や性能のノウハウを利用できる
問題は、その外部サプライチェーンをどれだけ安定して管理できるかです。
ここで重要になるのが「購買力」
MV Agustaの現在を理解するうえで、非常に重要な出来事があります。
2022年、MV AgustaとPIERER Mobilityは戦略的提携を発表しました。
その際、KTM AGはMV Agustaに対してサプライチェーン支援を行い、購買業務を引き受けると公式に発表しています。
つまりKTM側が、MV Agustaの「部品を買う力」を補う役割を持っていたわけです。
なぜKTMの購買力が重要だったのか?
非常に単純化すると、こういう違いです。
MV Agusta単独
年間数千台規模
↓
部品発注量も小さい
↓
サプライヤーとの交渉力が弱くなりやすい
大手グループの購買
複数ブランド・大量の部品をまとめて交渉
↓
発注量・購買力が大きくなる
↓
価格・納期・供給枠などで交渉しやすくなる
もちろん実際の契約内容は部品ごとに異なりますが、少量生産メーカーにとって「どれだけの購買力を持っているか」は非常に重要です。
ところが、MV AgustaはKTMから再び独立した
2025年1月、MV AgustaはKTMからの分離を発表しました。
MV Agusta自身は、Vareseを製品開発・生産・販売・マーケティング・アフターサービスなどの中心として、独立した事業運営を続ける方針を示しています。
つまり、KTMとの提携によって利用していた仕組みを、今度はMV Agusta自身で再構築する必要が出てきたわけです。
ここが現在のMV Agustaを理解する重要ポイント
「MV Agustaの工場が突然ダメになった」というより、大きなグループのサプライチェーンを利用していた状態から、再び自社中心のサプライチェーンを構築する段階に入ったと見る方が、現在の動きを理解しやすいでしょう。
そしてMV Agusta自身も「サプライチェーンを作り直している」と説明している
2025年6月のMV Agusta公式発表には、非常に興味深い内容があります。
当時、スペアパーツの物流はまだKTMの物流ネットワークと協力していましたが、MV Agustaは新たなグローバル物流パートナーへの移行を進めていると説明していました。
さらに、工場では新しいレイアウトとリーン生産方式を導入し、それまで外部で行っていた複数の生産工程を内製化したとしています。
つまりMV Agustaは、独立後に単純に「外注を増やす」のではなく、むしろ自社でコントロールした方がよい工程については内製化する方向にも動いています。
なぜ内製化するのか?
理由は比較的分かりやすいです。
外注すると、
外部メーカー
↓
生産待ち
↓
輸送
↓
MV Agusta
という流れになります。
一方、自社工場でできる工程なら、
MV Agusta工場
↓
製造
↓
組立
とできます。
もちろん設備投資や人員が必要になるため、何でも内製化すればいいわけではありません。
しかし、少量生産メーカーにとって「供給が不安定になると困る重要工程」を自社に戻すことには意味があります。
MV AgustaのVarese工場は、実際にはかなりの製造能力を持っている
ここも今回の調査で重要だったところです。
MV Agustaの931cc 3気筒エンジンは、公式に「Vareseで設計・開発・製造」と説明されています。
また、現在のモデルにはVarese工場でハンドクラフトされる限定モデルも存在します。
したがって、
「MV Agustaは工場が小さいから、自社ではほとんど何も作れない」
という理解は正確ではありません。
むしろMV Agustaは、少量生産ながら高度なエンジン・車両開発と製造を自社で行うメーカーです。
では、なぜ「部品」が問題になるのか?
ここで一つの答えが見えてきます。
バイクを作る能力と、過去に作ったバイクへ何年も部品を供給し続ける能力は、別の能力だからです。
新車を作る場合は、あらかじめ生産計画があります。
例えば、
「今年このモデルを1,000台作る」
↓
必要な部品を事前に発注
↓
部品が工場に入る
↓
車両を組み立てる
という計画を立てられます。
ところがアフターサービスでは、いつどの部品が必要になるか分かりません。
10年前のモデル
↓
突然1台故障
↓
専用部品が1個必要
となる可能性があります。
この「1個」を、メーカーがいつまでも在庫しておくのは簡単ではありません。
MV Agustaのようなメーカーでは、さらに難しい
MV Agustaはモデルごとの専用部品が多く、限定モデルも多いメーカーです。
例えばF3 Competizioneは300台限定モデルとして生産されています。
こうしたモデルでは、カーボンパーツ、専用外装、専用装備など、通常モデルとは異なる部品が増えます。
つまり、
「販売台数が少ないのに、部品の種類は少なくない」
という難しさがあります。
さらにMV Agustaはモデルチェンジも多い
2025年のMV Agusta公式発表では、新型モデルについて前世代からのキャリーオーバー部品がわずか1%になるという説明もありました。
これは技術やデザインという意味では非常に大きな変化です。
しかし部品管理の観点から見ると、かなり大変です。
例えば、
旧モデル
→ 部品A
→ 部品B
→ 部品C
から、
新モデル
→ 部品D
→ 部品E
→ 部品F
へ大きく変われば、旧モデル用の部品と新モデル用の部品を別々に管理しなければなりません。
これが積み重なると、部品の品番数が増えていきます。
「最新モデルを作る能力」と「10年前のモデルを修理する能力」は別物
ここがMV Agustaの部品問題を理解するうえで、一番分かりやすいポイントかもしれません。
新車工場では、
「これから作る車両」
のために部品を調達します。
アフターサービスでは、
「いつ壊れるか分からない過去の車両」
のために部品を維持します。
同じ「部品」でも、必要となる管理方法がまったく違います。
では「半年待ち」は異常なのか?
これは部品によって判断が変わります。
例えば、現在も大量に生産されている汎用性の高い部品なら、半年待ちはかなり長いと考えられます。
一方、
- 生産終了モデル
- 限定モデル
- MV専用設計部品
- 少量生産部品
- 電子制御部品
- 専用金型を必要とする部品
などであれば、再生産そのものに時間がかかる可能性があります。
したがって、「MVの部品は全部半年かかる」という単純な話ではありません。
では「1年以上」はどう考えるべきか?
1年以上という数字になると、単純な物流遅延だけでは説明しにくくなります。
考えられるのは、例えば次のようなケースです。
- メーカー在庫がない
- サプライヤーにも在庫がない
- 再生産が必要
- 最低生産ロットの問題がある
- 専用金型・治具が必要
- 材料の調達が必要
- サプライヤーとの契約・価格・発注条件の調整が必要
- 生産ラインの空き待ち
- 旧モデルのため部品生産が終了している
つまり、「部品が倉庫にない」のではなく、「部品をもう一度作るためのサプライチェーンを動かす必要がある」ケースです。
それでも、MV Agusta自身が「部品供給を改善している」と発表している
ここは重要なポイントです。
MV Agustaは2024年について、過去7年間に生産されたモデルを対象として99%の部品可用率を達成し、同年が過去最高の部品販売年だったと発表しています。
これは、少なくともMV Agusta自身が部品供給を重要な経営課題として認識し、改善を進めてきたことを示しています。
つまり、現在の問題を「MV Agustaは昔から部品供給を何も考えていない」と説明するのも正確ではありません。
そして現在、部品物流そのものも大きく変わった
MV Agustaは2025年末、スペアパーツの倉庫・物流業務をDHL Supply Chainへ移管しました。
DHLが保管業務を担当し、DHL Expressが世界各地への配送を担う体制です。
MV Agustaは、この取り組みによって注文管理、在庫精度、納期、世界各地への配送を改善し、過去に問題となった部品供給面の課題にも対応すると説明しています。
これはかなり大きな変化です。
ただし、DHLが入ればすべて解決するわけではない
ここは非常に重要です。
DHLが得意なのは、
部品を保管する
↓
注文を受ける
↓
ピッキングする
↓
発送する
↓
世界中へ届ける
という物流です。
しかし、DHLはMV Agustaのために部品そのものを製造するわけではありません。
例えばメーカー倉庫に部品が100個あるなら、DHLはその100個を効率よく世界へ届けることができます。
しかし、在庫が0個ならどうでしょうか。
DHLがどれだけ優秀でも、0個を100個にすることはできません。
つまり、本当の問題は「物流」だけではない
部品供給を簡単に図にすると、次のようになります。
部品メーカー
↓
MV Agustaの購買
↓
生産・入荷
↓
倉庫
↓
DHL
↓
ディーラー
↓
オーナー
このどこか一つが止まるだけでも、オーナーには「部品が来ない」という結果として現れます。
だから、MV Agustaの部品問題を「工場の問題」だけで説明するのは難しい
今回の調査から見えてきたのは、MV Agustaの問題が複数の層に分かれているということです。
| 層 | 問題 |
|---|---|
| 製造 | 自社で作れるものと外部調達するものが混在 |
| 購買 | 少量生産ゆえに大手メーカーほどの購買力を持ちにくい |
| サプライヤー | 専用・少量部品では再生産に時間がかかる可能性 |
| 在庫 | 現行車だけでなく過去モデルの部品も維持する必要がある |
| 物流 | KTMとの分離に伴い物流体制を再構築 |
| 経営 | 独立後に購買・SCMなどを自社中心に再構築する必要 |
では、MV Agustaは「製造業としてダメ」なのか?
ここは慎重に考える必要があります。
少なくとも公開されている情報を見る限り、単純に「工場の製造能力が低い」と結論づけるのは適切ではありません。
むしろ現在のVarese工場は、エンジンの設計・開発・製造まで行い、車両開発や生産の中心として機能しています。
さらに2025年には、外部で行っていた複数の生産工程を内製化したとMV Agusta自身が説明しています。
つまり現在のMV Agustaは、
「作る能力を失っている会社」
というより、
「少量生産メーカーとして、サプライチェーン全体をもう一度安定させている途中の会社」
と見る方が実態に近いと考えられます。
MV Agustaが本当に解決しなければならないこと
では、今後MV Agustaが部品供給を安定させるためには何が必要なのでしょうか。
1.サプライヤーとの関係を安定させる
まず重要なのが、部品メーカーから安定して部品を供給してもらえる体制です。
これは単に「注文する」だけではありません。
- 年間の需要予測
- 生産計画
- 発注量
- 生産枠の確保
- 品質管理
- 長期契約
- 重要部品のバックアップ
などを管理する必要があります。
2.重要部品は「なくなってから作る」を減らす
少量生産メーカーでは、すべての部品を大量に在庫するのは現実的ではありません。
しかし、壊れたら車両が動かなくなるような重要部品については、一定量の安全在庫を持つ価値があります。
特に旧型車については、今後どれだけ部品需要が残るかを予測しておく必要があります。
3.部品の共通化を進める
これも非常に重要です。
例えば複数のモデルで同じ部品を使えるようにすれば、必要な生産量をまとめられます。
すると、
モデルA → 100個
モデルB → 200個
モデルC → 300個
↓
共通部品 → 600個
といった形で生産しやすくなります。
4.物流だけでなく「部品そのもの」の供給を改善する
DHLとの提携は非常に重要です。
ただし、物流が速くなっても部品そのものが不足していれば問題は解決しません。
そのため、
サプライヤー → MV Agusta → 倉庫 → DHL → ディーラー
という全体を一つの仕組みとして改善する必要があります。
では、今後MV Agustaの部品供給は改善するのか?
これは「いつ完全に解決する」と断言できる状況ではありません。
ただし、改善に向けた動きは明確に確認できます。
MV Agustaは2025年にKTMからの独立を進め、工場の生産体制を見直し、外部で行っていた複数工程を内製化しました。
さらにスペアパーツについては、2025年末までにDHL Supply Chainへの物流移管を完了させています。
つまり、
工場 → 生産工程を再構築
購買・SCM → 独立後の体制を再構築
物流 → DHLへ移管
在庫管理 → ITシステムを含めて改善
という複数の取り組みが同時に進んでいます。
一方で、ここからが本当の勝負
物流体制が整っただけでは、MV Agustaの部品問題が完全に解決したとは言えません。
本当に重要なのは、
「必要な部品を、必要な時期に、必要な数量だけ作れるサプライチェーンを構築できるか」
です。
特にMV Agustaの場合、年間生産台数が大手メーカーと比べて非常に少ない一方、モデルや限定車によって専用部品が多くなりやすいという難しさがあります。
この問題を解決するには、単に倉庫を大きくするだけでは足りません。
MV Agustaの部品問題を一言で表すなら
「バイクを作れない」のではなく、
「バイクを作り続け、過去のバイクにも部品を供給し続ける仕組み」が難しい。
これが、現在のMV Agustaを考えるうえで非常に重要なポイントだと思います。
まとめ:MV Agustaの部品問題は「工場」だけを見ても分からない
MV Agustaの純正部品が半年、場合によっては1年以上待ちになるという問題は、単純な製造能力不足だけでは説明できません。
背景には、
- 年間数千台規模という少量生産
- 専用部品の多さ
- 外部サプライヤーへの依存
- 少量生産ゆえの購買力の問題
- KTMとの提携による購買・サプライチェーン体制
- KTMからの独立に伴う体制再構築
- 過去モデルの部品を維持する難しさ
- 物流システムの再構築
など、複数の要因があります。
そして現在のMV Agustaは、この問題を放置しているわけではありません。
2025年にはVarese工場の生産体制を見直し、外部で行っていた一部工程を内製化。さらに2025年末にはスペアパーツ物流をDHL Supply Chainへ移管し、2026年には新しい物流体制を公式に発表しています。
一方で、DHLが解決できるのはあくまで物流の問題です。
本当に重要なのは、その前段にある「部品を安定して作り、確保し、MV Agustaへ供給する仕組み」です。
ここが安定して初めて、
「注文した部品が、普通に届くMV Agusta」
に近づいていくことになります。
今後注目したいポイント
- MV Agusta独立後のサプライヤー体制
- KTM時代から何が変わったのか
- DHL移管後の実際の部品納期
- 旧型モデルの部品供給が改善するか
- 重要部品の在庫体制
- Varese工場の内製化がどこまで進むのか
- 新しいモデルで部品共通化が進むのか
MV Agustaが本当に「復活した」と言えるかどうかは、新しいバイクを発表できるかだけではなく、「10年前のMV Agustaに乗っているオーナーにも、必要な純正部品をきちんと届けられるか」という部分にもかかっているのではないでしょうか。
参考資料
この記事では、主にMV Agusta公式発表・公式車両情報をもとに、公開されている製造・サプライチェーン情報を整理しています。
- MV Agusta「Back to Running on Its Own」:2024年の販売・部品供給実績、KTMからの独立、Vareseの役割など
- MV Agusta「Mid-Year Update」:KTM分離後の生産体制、内製化、スペアパーツ物流移管など
- MV Agusta「DHL Supply Chain Partnership」:2025年末のスペアパーツ倉庫・物流移管
- MV Agusta「MV Agusta and PIERER Mobility Agree on Strategic Cooperation」:KTMによる購買・サプライチェーン支援
- MV Agusta公式車両情報:Vareseで製造されるエンジン・限定モデルなど

